イラン原油全面禁輸、それでもアジアは供給不足に陥らず

[シンガポール 23日 ロイター] – 米政府はイラン産原油禁輸の猶予措置の撤廃を決めたが、主な買い手であるアジア諸国は既にイラン産の輸入を減らしているほか、米国やサウジアラビアなど余剰生産能力を持つ他の産油国による穴埋めも容易なため、今回の措置でアジア諸国が供給不足に陥ることはなさそうだ。

石油輸出国機構(OPEC)諸国やロシアなど産油国が1月から減産を実施していることもあり、米国のイラン産全面禁輸の発表で原油価格は急騰。中国やインドなどイラン産の主な輸入国であるアジア諸国は燃料価格の高騰に見舞われそうだ。

しかしアジアで供給不足が生じる公算は小さい。

ゴールドマン・サックスが22日公表した推計によると、猶予措置撤廃によるイランの原油輸出の落ち込みは日量90万バレル。一方、米国やサウジ、アラブ首長国連邦(UAE)、ロシアなどの産油国の余剰生産能力は同200万バレル程度もあり、イラン産の穴を十分に埋められる。こうした産油国の余剰生産能力は来年は同250万バレルに拡大しそうだという。

トランプ米大統領は猶予措置の撤廃に当たり、米国やサウジが十分な供給を行うと言明。スターフューエルズのブローカー、マット・スタンレー氏は「米国は全面禁輸で供給不足が生じても全部埋められることを余裕で示した」と述べた。米国の生産が足りなくても「サウジとUAEが増産すると請け合うだろう」という。

イラン産原油の輸入が多い上位4カ国は中国、インド、日本、韓国のアジア諸国で、いずれも猶予措置の撤廃を見越して3月と4月に輸入を増やした。ただ、この駆け込み輸入以前には既にイラン産の輸入を減らし、問題ないことが分かっている。

イラン産の最大の輸入国である中国は年初来のイラン産の輸入が平均日量50万バレルと、昨年のピークの同80万バレルを下回り、原油輸入全体に占める比率は5%にすぎない。

中国石油天然ガス集団(CNPC)の幹部は23日、米国産など他の供給で不足は補えると指摘。米国の今年の原油生産量の増加分は日量160万─170万バレルとなる見通しで、1カ国だけで世界の需要の増加分(同120万─130万バレル)を埋めることができるとした。これにOPEC加盟国の余剰生産能力も加わるため、「供給不足は起きない」

中国と並ぶイラン産の大口輸入国であるインドも既にイラン産の輸入を圧縮している。リフィニティブのデータによると、今年に入ってからの輸入は平均日量30万バレルと全体の6%程度で、昨年半ばのピークの同75万バレルを大幅に下回った。

プラダン石油・天然ガス相は23日、インドは他の産油国から供給を受けてイラン産の不足を補うことができると述べた。

リフィニティブのデータによると、米国と関係の深い同盟国である日本は、昨年11月から今年1月にかけてイラン産原油の輸入を停止。その後の輸入は日量20万バレルと需要全体の5%相当にとどまっている。世耕弘成経済産業相は23日、米国がイラン産原油禁輸で適用除外措置の打ち切りを決定したことについて、日本への影響は限定的との見方を示した。

韓国も昨年の8月から12月にかけてイラン産の輸入をすべて停止した。今年の輸入は平均で日量30万バレルで、そのほとんどを石油化学製品の製造に使われるコンデンセートが占めた。

Henning Gloystei

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