アングル:デモ激化させた香港への絶望、3畳間の怒れる若者たち

Thomas Peter

[香港 4日 ロイター] – 香港を揺るがし、中国政府を怒らせた激しいデモの先頭に立ったのは若者だった。容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案への反発を契機としたデモの根底には、ますます介入を強める北京の共産党政府によって市民の自由が脅かされ、香港の自治が損なわれることへの懸念があった。

中国政府は、かつて英領だった香港の完全な民主化を拒否している。

だが、世界で最も人口密度と物価が高い街の1つ香港に住む若者の多くは、生活費の高騰や、住宅所有は夢でしかないというあきらめに怒りを募らせている。

ロイターは、親と同居し、狭い部屋で暮らす若い世代11人に取材し、政治的な懸念や香港での生活の不満について聞いた。

小学校教師のユーニス・ワイさん(30)は、レインボーカラーのシーツに覆われた自分のベッドに座り、香港の人たちが中国政府のせいでいかに息苦しい思いをしているかを話した。「彼ら(中国政府)は市民への支配を強め、われわれの自由を奪っている」と、広さ7.4平方メートル(4畳ほど)の自室で語った。

だがワイさんは、生活を難しくしている問題は他にもあると指摘。特に問題なのが住宅政策で、富裕層をより豊かにする不公平なものだとワイさんは言う。

「住宅問題は非常に重要だ。香港は土地が狭く、アパートを買うのに苦労する人が多い。不動産会社が市場を牛耳っている」

1997年に英国から中国に返還された香港では、「一国二制度」の下、抗議デモを行う自由や独立司法など、本土にはない自由が認められている。

だが香港の住人の多くは、中国政府が徐々に締め付けを強め、直接選挙による行政府長官の選出も認めないことに不満を感じている。

中国側は香港への介入を否定し、先週末に暴徒化したデモは一国二制度への「まぎれもない挑戦だ」としている。

<若者の絶望感>

グラフィックデザイナーのフン・チェンさん(25)は、両親と兄弟と共に暮らしている。広さ5平方メートル(3畳弱)の自室には机と、その上に覆いかぶさるようにベッドを置いている。

そのベッドの上でチェンさんは、香港の今のシステムに、自分の家を持つ可能性を奪われたと怒りをぶちまけ、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は人々の声に耳を傾けようとしなかったと訴えた。

同長官は、2017年に選挙委員会により選出され、中国政府に任命された。チェンさんは「システムの問題だ。(行政府は)選挙による信任を必要としない。民主主義ではない」と吐き捨てた。

林鄭長官は、市民の反発を受けて「逃亡犯条例」の改正案を凍結し、来年に先送りすることを表明した。抗議デモ参加者は、改正案の廃案と行政長官の辞任を要求している。

眼鏡が似合う大卒のマイケル・ホーさん(24)も、親と同居している。抗議活動は、若者が夢を追えない不公平な現状を訴えるものでもあったと話す。

「価格の高騰が原因で、若い人が成長し、キャリアを積むのが絶望的になっている」と、ホーさんは訴えた。

人口740万人の香港では、公営住宅の入居待ちは平均5年半。住宅の平均面積は40平方メートルだ。

母親と4人の姉妹と暮らすロイ・ラムさん(23)は、若者は自分たちが手にして当然のものを求めて立ち上がったが、楽観的でいるのは難しいと話す。

「すべて諦め、別の所へ移住しようと考えてしまうことがある」

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