日米通商交渉、首脳会談で合意文書に署名へ 自動車は協議継続

竹本能文

[東京 18日 ロイター] – 日米両首脳は25日にも会談し、日米通商交渉の大枠合意を受けた文書に署名する見通しだ。農産品を中心とした日本の関税引き下げは環太平洋連携協定(TPP)の範囲にとどまり、懸念されていた為替条項も盛り込まれない見通し。

一方、最大の焦点である自動車をめぐっては、日米間の溝は深く、協議が継続される見通し。日本側は協議中は日本から輸出される自動車に追加関税が課されないよう文書で確認したい意向だ。

複数の関係筋が明らかにした。

<為替条項は盛り込まれない見通し>

国連総会出席で米ニューヨークを訪れる安倍晋三首相は、トランプ大統領との首脳会談で、通商合意の文書に署名する。トランプ大統領は16日、米議会に対し、対日交渉で最初の合意に達し、数週間以内に協定に署名すると通知した。

TPPから離脱した米国の農家を中心に不満の高まっていた農産品の関税をめぐってはTPPの範囲内に下げられる見通し。牛肉については、現在38.5%の関税を段階的に9%に引き下げるが、関税水準は先に下げられているTPP参加国の関税水準に劣後しないように引き下げられる見通しだ。

コメについては、米国が交渉から離脱する前のTPPでは、日本が米国に対し最大7万トンの無関税輸入枠を設定する計画となっていたが、今回は枠の縮小を目指している。

米自動車業界が強く求めていた、為替操作を禁じる為替条項については、今回の文書に盛り込まれない方向だ。

今回の合意を受けて、日本の農家などに影響が出ると判断される場合、日本側は、TPPや日欧EPA(経済連携協定)締結を受けた対策「TPP等政策関連大綱」を改訂するかたちで、対応を検討する方針だ。

<西村再生相が交渉引き継ぎ>

もっとも米国は年間7兆円の対日貿易赤字の削減を目標に掲げている。貿易収支は自由貿易体制のもとで政府は管理できないという日本の立場との溝は埋まっていない。

昨年9月に日米首脳が通商交渉の開催で合意した際に作成した共同文書では、自動車について米自動車産業の雇用が増えるようにするとの文言が書き込まれた。日本側は、日本メーカーの米国現地生産を拡大できるように、米国の乗用車・部品輸入関税(3.5%)の引き下げを求め続けているが、複数の関係筋によると米側は難色を示し続けており、議論は継続される見通しだ。

米国は日欧の自動車輸出を抑制するため、安全保障を理由に通商拡大法232条に基づく高関税の追加発動を検討しており、判断期限は11月中旬となっている。日本側は交渉継続中は米国が日本に追加関税を課さないことを書面で確認したい方針という。

日本側は、今回の合意により「1年程度、日米交渉は不要」(与党)との楽観論がある一方、「来年に大統領選を控えるトランプ大統領は年内に成果を求める」(政府関係者)と警戒する声がある。これまで日米交渉を率いた茂木敏充・前経済再生相は外相に就き、通商交渉を兼務するには多忙となるため、「西村康稔再生相が交渉を引き継ぐ」(与党幹部)との見方が浮上している。

日米交渉の結果、国内の自動車産業に悪影響が出ると判断される場合には、「自動車関連の税制改正を軸に業界対応策が検討される見通し」(政府関係者)という。

(編集:石田仁志)

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