日米が貿易合意文書に署名、自動車追加関税の発動ないと確認

[国連 25日 ロイター] – 安倍晋三首相とトランプ米大統領は25日、米ニューヨークで開いた会談で貿易協定の締結で合意し、合意文書に署名した。トランプ大統領は約70億ドル規模の日本市場が開放されると述べた。一方、日本から米国に輸出される自動車と関連部品の関税撤廃については協議継続となった。

茂木敏充外相によると、自動車への追加関税は、貿易協定が誠実に履行されている間は発動されないと安倍首相が大統領に確認したという。

共同声明は「二国間貿易を強力かつ安定的で互恵的な形で拡大するために、一定の農産品および工業品の関税を撤廃または削減する」と表明。また、デジタル貿易協定の締結により、両国がデジタル貿易に関する世界的なルールづくりにおいて主導的な役割を果たしていくとした。

両国は貿易協定発効後、4カ月以内に協議を終える意向で、協定を誠実に履行するとともに、協定を履行する間は協定や声明の精神に反する行動を取らないことを確認した。

トランプ大統領は国連総会の合間に安倍首相と開いた署名式で、貿易協定の第一弾で400億ドル規模のデジタル貿易をカバーすると説明。日米双方が協議を継続すると述べた。

<米産牛肉などTPPと同等の関税削減>

米通商代表部(USTR)は、署名された合意を「初期の成果」と指摘。トランプ大統領によると、日本は70億ドル相当の米農産物について市場を開放し、米産牛肉や豚肉、小麦、チーズ、トウモロコシ、ワインなどへの関税が大幅に引き下げられるか、撤廃される。USTRによると、日本に輸出される米農産品の約90%が免税か優遇措置の対象になるという。

日本政府の資料によると、牛肉、豚肉、小麦、乳製品、ワインについては環太平洋連携協定(TPP)と同等の関税撤廃もしくは削減が実施される見込み。一方、コメについては無関税枠をゼロとした。脱脂粉乳やバターなど乳製品の輸入枠も設けられない。

牛肉は、米国からの輸入量が急増した場合にセーフガード(緊急輸入措置)を発動する基準数量を、2020年で24万2000トンとすることで合意した。TPP参加国では発動基準は60万トンとなっており、低価格の輸入牛肉が急増しないよう、日本はTPP参加国とセーフガード基準数量を再協議する意向だ。

<日本からの自動車部品関税撤廃は協議継続>

一方、米国は日本からの切り花、しょうゆなどのほか、工作機械、蒸気タービン、自転車などの幅広い工業機器に対する関税を撤廃または引き下げる。

焦点の自動車・自動車部品については、個別品目の関税の撤廃・削減の方法やスケジュールを定めた譲許表に「さらなる交渉による関税撤廃」を明記した。茂木外相は「具体的な撤廃時期は今後の交渉の中で決まって行く」とし、「自動車は電動化など大変革期にあり、どのような部品が重要か見極め、協議するのが大切」と指摘した。

<USTR代表、「追加関税発動は意図せず」>

共同声明には「これらの協定が誠実に履行されている間、協定や共同声明の精神に反する行動を取らない」との文言が盛り込まれた。

茂木外相は会見で、「この協定に反するような対応がなければ誠実に履行されていると考えるが、その間については、追加関税が課されることはないことを首脳会談で安倍首相がトランプ大統領に確認している」と説明した。

日本側は、米通商拡大法232条に基づく安全保障上の観点で日本車に関税を発動しないという確約を米側に求めていた。これについてライトハイザーUSTR代表は、同232条に基づく日本への関税発動は米国の意図するところではなく、両国とも誠意を持って問題に取り組んでいくと述べた。

その他、デジタル分野ではソフトのダウンロードへの課税などが禁止される。

*内容を追加します。

 

(竹本能文 編集:田中志保)

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