11月24日、香港の区議会選挙の投票で民主派が圧勝したことに市民から歓声が上がった(宋碧龍/大紀元)

香港区議選の結果に落胆した中国指導部、ニセ情報で情勢を誤判断か 民意を読み取れず

11月24日、香港で行われた区議会選挙(地方議会選挙)では、民主派候補者は452議席のうち、8割を超える388席を獲得し、親中派は59席にとどまった。香港メディアの報道によると、中国最高指導部はこの結果に驚いた。習近平指導部は、偽情報や共産党の「闘争理論」によって、香港情勢について間違った判断を下したとみられる。

驚愕

香港の親中派メディアは選挙後、「情勢を見誤った」との評論記事を次々と掲載した。ニュースサイト・香港01は25日、情報筋の話を引用して、北京の最高指導部は選挙の結果に落胆したと報じた。報道は、「指導部は、今回の選挙は建制派にとって厳しい戦いになると予想したが、これほど『悲惨な』負け方は想像もできなかった。これまで見たこともない厳しい局面の下で、中国の最高指導部は林鄭月娥氏の更迭を再検討するだろう」とした。

情報筋によると、中国指導部は、「投票日前の2週間に起きた香港中文大学や理工大学での混乱、デモ隊による海底トンネルの封鎖、デモ隊が投げたレンガに当たって70歳の市民の男性が死亡したことなどで、「香港政府への不満より、デモ隊の暴力への嫌悪感の方が強いと考えていた」。この情報筋は、「当局は今後、暴力と混乱を制止するという現在の方針を見直すだろう」と指摘。

米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」は25日、同誌のジェームス・パーマー副編集長が執筆した評論記事を掲載した。記事によると、24日の香港区議会選挙後、中国各メディアの編集部は混乱し、「どうやって中国共産党に有利な報道をすればよいのか」と頭を抱えていたという。

パーマー氏が共産党機関紙・人民日報とその傘下の環球時報、英字紙チャイナ・デイリーの記者に取材したところ、この三大官製メディアは24日以前に、親中派の大勝を見込んで、あらかじめ記事を書き上げていたという。「得票数だけを空欄にしていた」

虚偽の情報

中国習近平指導部が香港情勢を誤判した原因の一つは、指導部が得た情報はすべてウソだったということが挙げられる。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が10月半ばに行った報道によると、中国当局と30年間以上の付き合いのある米当局者は、中国の末端組織は中央政治局を含む上層部に偽情報を伝えていることを明らかにした。米当局者は「中国の末端組織は常にウソを言っている」と述べたという。

「香港問題に関して、中国の高官らは常に当局の主張を踏襲している。つまり、米国と英国の『悪勢力』が香港の混乱を引き起こしたということだ。香港政府の高官も習近平氏本人もこのように主張している。しかし、彼らは、民意を無視する香港の政治体制や、無能な香港政府と悪化している経済的不均衡が、香港市民の不満を引き起こしたと気づいていない」

FT紙は、習近平政権が発足してから、中国共産党の全体主義を強めたことが、香港情勢を悪化させた主因だとの見方を示した。

この体制下で、末端組織の幹部が上層部に「悪いニュースを伝える」ことが憚られている。「例えば、中国でまん延しているアフリカ豚コレラに関して、地方政府は中央政府に対して各地の感染の実情を報告できない」という。

中国国内法学者の張傑氏は今年3月、米中国語テレビ放送・新唐人の取材に対して、地方政府の幹部は「失脚を恐れて、アフリカ豚コレラの感染状況を隠している」と指摘した。

香港誌「信報月刊」の9月の報道によれば、香港人ジャーナリストの程翔氏は、中国当局が派遣した情報部員は親中派から情報を収集しているため、「中国指導部は民主派の意見を耳にできない」と指摘。

程氏は、中国当局の末端から最高指導部の中央政治局常務委員まで情報を届けるのに、8~10回のチェックを受けていることを明らかにした。「この過程で、厳しい指摘や意見が全部、消されてしまう」という。

闘争理論

中国最高指導部が香港情勢について判断を誤った二つ目の原因は、共産党の闘争理論にあるとされる。

程翔氏は、「中国共産党政権は、旧ソ連を崩壊させた黒幕は米国であり、共産主義陣営を崩壊させようとする米国が今、中国の崩壊を企てている、と認識している」とした。

同氏によると、中国当局は、西側諸国が香港を足がかりにし、中国の転覆を図っているのではないかと、強い警戒感を抱く。中国当局は「香港問題は国際闘争だ」と捉えている。

中国国防大学の徐焰教授は昨年、「香港人の出自は最も悪い。国民党の残留部隊の兵士や、(1950年代の)大飢饉時代、中国から逃げてきた難民と植民地時代からの住民がいる」と発言した。程氏は「中国当局は常に階級闘争の角度から香港問題に対応している」と批判。

不安

香港の区議会選挙が行われた後、人民日報系の環球時報は25日、社説を発表し、「西側勢力はさまざまな方法で香港の選挙に影響を及ぼそうとしている」と従来の論調を繰り返した。

環球時報は、英BBCが香港の英領事館元職員が中国当局に拷問されたと報道したことや、米上院で「香港人権・民主主義法案」が可決したこと、豪メディアが中国人元スパイを報じたことはいずれも、「西側が香港情勢に介入するための愚かな手段であり、区議会選挙の行方を左右しようとしている」と主張した。

李林一氏は、同紙の社説はその闘争思想を反映しただけでなく、中国共産党が政権崩壊を危惧している実態をも浮き彫りにしたとの見解を示した。

「実に、共産党は設立以降、常に存続の危機に晒されている。  崩壊への恐怖から事実を無視し、香港市民の運動を香港独立運動として批判し、抗議者に暴徒のレッテルを貼り、対立を先鋭化させてきた」

前出のジェームス・パーマー副編集長は記事で、ある中国のジャーナリストの話として、「(共産党メディアの)報道が有毒物質であり、香港市民の人心を得ることはできない」と述べた。

(翻訳編集・張哲)

 

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