焦点:ベネズエラ野党指導者に失速懸念 大統領打倒に汚職の逆風

[カラカス/マラカイボ(ベネズエラ) 3日 ロイター] – ニコラス・マドゥロ大統領の打倒をめざすベネズエラ野党指導者フアン・グアイド氏が、新たな難題に直面している。野党議員に収賄疑惑が持ち上がったためだ。幻滅したベネズエラ国民の間には、グアイド氏の「旬」は過ぎたのではないかとの疑念も広がっている。

ベネズエラの調査報道サイト「アルマンド・インフォ(Armando.info)」は、野党の国会議員9人がマドゥロ政権とつながりのある企業関係者に便宜を図っていたと報道。この報道を受けてグアイド氏は1日、議会において、違法な謝礼を受けたと疑わしき野党議員を調査するとの姿勢を示した。

 

<「グアイド氏は時機を逸した」>

 

荒廃しつつあるベネズエラ西部の都市マラカイボでバスを待っていたマリオ・シルバさん(60)は、ロイターのインタビューに対し、「前進すべきときだ」と述べ、「グアイド氏は時機を逸した」と失望を隠さなかった。

今年1月、シルバさんを含む数百万人のベネズエラ国民は、マドゥロ大統領に対する大胆な挑戦者としてグアイド氏が暫定大統領への就任を宣言したとき、分裂しがちだった野党勢力を結束させ、過去のスキャンダルとも無縁の清新な政治家が登場したことを歓迎した。

シルバさんは、かつては故ヒューゴ・チャベス氏が主導した「社会主義革命」に賛同しており、しばらくの間は後継者であるマドゥロ大統領のことも支持していた。だが彼は、マドゥロ政権下で、国内の貧困と政治腐敗の拡大が無視できないほど深刻になってきた、と語る。

しかし、同時に、シルバ氏はグアイド氏にも厳しい。「グアイド氏はこの国に救済をもたらすように見えたが、チャベス氏と同様、彼にも落胆させられた」。

グアイド氏は50以上の国からベネズエラの正統な指導者として承認されている。だが、米国による制裁強化にもかかわらず、マドゥロ氏はなお軍に支持され、国家機構を支配している。

 

<グアイド旋風に陰り>

 

先月、グアイド氏は新たな街頭抗議行動を立ち上げようと努めた。だが、参加した人数は今年初めに同氏が動員した規模に比べればわずかだった。

グアイド旋風が勢いを失ったことによって、仲間の野党議員の一部には、新たな主導権争いに向けた衝突も生まれつつある。ただし、アナリストや政治家によると、ほとんどの野党議員はまだグアイド氏を公然と批判し始めるには至っていないという。

カラカスで活動する政治アナリスト、ディミトリス・パントゥラス氏は、「この10カ月、ベネズエラで見られた政治状況はすでに終わった」と話す。「調和と団結の時期は終わったということだ」。

グアイド氏が率いる大衆意志党の全国コーディネーターを務めるエミリオ・グラテロン氏は、あるインタビューのなかで、グアイド氏が「(野党の)明白な指導者」の立場に留まると述べつつ、今回の収賄スキャンダルによって「亀裂」が生じたことを認めている。

 

<疑われる違法謝礼>

 

アルマンド・インフォは今月1日、9人の国会議員が米財務省などに対し、カルロス・リズカノという名のコロンビア人男性を推薦する書簡を送っていた、と報じた。このリズカノ氏は、やはりコロンビア人で米国の制裁対象となっているアレックス・サーブという人物と関係があり、当局が捜査しているところだった。サーブ氏はマドゥロ政権が支援する食糧配給プログラムに関連した汚職で告発されている。

同サイトによれば、議員らはリズカノ氏とサーブ氏の関係を示す証拠を認識しつつ、書簡を送ったという。

グアイド氏は、疑惑を掛けられた国会議員は、推薦状を書くことと引き替えに違法な謝礼を受けていた疑いがあると述べ、「盗賊の汚名をすすぐために国家機関を利用しようという試みで、容認しがたい」とした。

国会議員らが法に違反したかどうかは今のところ明らかではない。関係する野党は腐敗疑惑を遺憾とする声明を出し、当該議員の除名を約束した。リズカノ氏、サーブ氏からのコメントはない。

 

<マドゥロ大統領は権力掌握を強化>

 

グアイド陣営のグラテロン氏は、この事件は「倫理意識の低い少数の」議員だけに関わるもので、マドゥロ政権による大規模な国家規模の腐敗ははるかに規模が大きく、同列には論じられないと指摘する。

グアイド氏を米国に操られる「クーデターマニア」と見なしているマドゥロ政権は、自政権関係者の政治腐敗に対する野党側の告発を一貫して否認しており、今回のスキャンダルについては控えめに歓迎している。

その一方で、マドゥロ大統領の権力掌握はさらに強化されているように見える。現地世論調査会社によると、政権の支持率は2月の61%から11月には42%まで下落していた。そこへ、今回の野党スキャンダルが発生した。

東部の都市シウダードグアヤナのビジネスマン、49歳のルーベン・イリアートさんは、「戦うべき相手と同じ存在になってはいけない。腐敗した体制を非難しておきながら、腐敗した人間の仲間入りをするわけにはいかない」と語った。

(翻訳:エァクレーレン)

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