武漢赤十字病院の隔離病棟の医療スタッフ=2020年2月16日(STR / AFP via Getty Images)

武漢支援の医療スタッフが医学誌に投書 窮状訴える 圧力で撤回か

湖北省武漢で活動する医療スタッフはこのほど、世界的に権威ある医学誌「ランセット(Lancet)」に投書し、窮状を訴えたうえ国際援助を求めた。しかし、投書は2日後に撤回された。

「ランセット」オンライン版は2月24日、「読者からの手紙(Correspondence)」の形で「武漢に派遣された広東省の医療支援スタッフ」と称する曾迎春(ゼン・インチュン)さんと甄燕(ジェン・ヤン)さんが共同執筆した文章を掲載し、中共肺炎新型肺炎)に対抗するために各国に国際援助を呼びかけた。

投書は現場の窮状を訴えている。

「武漢の環境は想像以上に大変です。N95マスク、フェイスシールド、ゴーグル、長袖ガウン、手袋などの保護具が深刻な不足に直面している」

「また、頻繁に手を洗う必要があるため、何人かの同僚の手にはかゆみや痛みを伴う湿疹ができている。N95マスクを長時間着用し、何枚も重ねた結果、耳や額に肌荒れができた人もいる」

「体力と防護服の着脱時間を節約するために、隔離病棟に入る2時間前から飲食していない。多くの看護師の唇やその周辺に多数の水ぶくれができている。また、看護師の中には低血糖や酸素不足で失神してしまった人もいる」

そして、精神的なストレスも限度に達したという。

「私たちは、強い不安、無力感、恐怖を感じます。経験豊富な看護師は、時に同僚を慰めたり、不安を和らげようとしたりします。しかし、熟練看護師でさえ涙を流す時がある。私たちは先の見えない不安に苛まれ、新型ウイルスに感染するリスクがもっとも高いことに恐怖を感じている」

また、中国全土から1万4000人の看護師が武漢に派遣されたが、医療スタッフの不足は依然として深刻だ。2人は世界各国に救援の手を差し伸べ、直ちに医療関係者チームを中国へ派遣するよう呼びかけた。

波紋が広がり、文章撤回も

「ランセット」で発表したこの文章が中国で注目を集めた。一部の中国メディアも中国語に翻訳して転載したが、記事はまもなく削除された。中国で人気の医療情報サイト「丁香園(DXY.cn)」は26日午前、この投書に関する記事を掲載し、SNS微博で話題を呼んだが、同記事は午後に削除された。

26日付けの広東省の日刊紙「南方都市報」(オンライン版)は「広東省から湖北武漢に派遣された医療支援隊」の声明文を掲載し、2人の執筆者は医療隊のメンバーではなく、訴えた内容も実情から乖離しているとし、「ランセット」の投書を撤回し謝罪すべきだと主張した。ただし、この声明文は現在も削除されている。

香港紙、蘋果日報(アップル・デイリー)は26日、公式資料によると曾迎春さんが務めている広東医科大学付属第3病院は、広東から武漢への支援隊のリストに載っていないと報じた。

それによると、博士号を取得し英語も上手な同氏が、同僚から助けを求める手紙を受け取り、それを英訳して「ランセット」に投書した可能性があるという。

公開された資料によると、曾氏は湖南医薬学院・看護専門学院を卒業後、イギリスで修士課程を終了。その後、香港理工大学で博士号を取得し同校で教鞭をとった。

「ランセット」は26日、「投書内容は著者が直接目撃したものではなく、投書を取り下げたいとの連絡があった」として、投書の取り下げを決めた。

中国政府は、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の感染拡大を受け、言論統制を強化し続けている。当局を批判する声のみならず、SNS上で窮状を訴える書き込みも削除された。

中国当局は各国や国際機関からの物資支援および寄付金は受けているが、外国の医療スタッフや専門家チームの派遣は要請していない。

(翻訳編集・王君宜) 

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