【紀元曙光】2020年3月21日

老舎(ろうしゃ)という小説家がいた。北京の胡同(フートン)に住む庶民の細やかな生活を描いた作風で、評価が高い。ただし、純粋な人柄であるがゆえに、中国共産党に利用されて中共賛美の小説や戯曲などを書いてしまったのが、実に惜しまれる。
▼1949年、北京に共産主義政権がつくられた。「新しい祖国建設のため、力を貸してほしい」という美名のもと、欧米や日本に留学していた中国人学生に対して召還命令が飛ぶ。当時、米国にいた老舎は50歳を迎える年齢であったが、青年の理想に燃えて帰国する。否、騙されて帰国してしまった。
▼老舎は文化大革命期の1966年、死んだ。入水自殺とされているが、老年ながら首にかけられた「罪名」プラカードを地面にたたきつけた彼の硬骨からして、紅衛兵に殺害されたのであろう。
▼今日の中共ウイルスは、直接的に人を病ませる以前に、膨大な数の人心を狂わせてしまう。実例に基づくモデルケースを挙げる。日本に留学している中国人学生に対して、両親から「日本は今、一番危ないから、すぐに帰ってきなさい!」という悲痛の声が連日とどく。ほだされて帰国しようものなら、大変なことになる。
▼空港に着いた途端、警察に足止めされて、指定されたホテルに14日間の隔離。ホテルでは法外な滞在費をとられる。もちろん警察とホテルは裏でつながっている。
▼そこでウイルス感染が発覚すれば(人為的に感染させる可能性も有)彼らのシナリオは完結する。「ほら見ろ。日本からウイルスを持ち込んだぞ!」。うっかり帰国できないのが、今の中国である。