イタリア。つぶやきながら本稿を書いている。人が見たら、奇異に映るだろう。
▼行ったことがなくても、その国へ行ったような気になるのは、やはり古い映画の影響からか。筆者は、もちろん日本初公開時に見たわけではないが、『ローマの休日』(1953)が印象に深い。
▼劇中のオードリー・ヘップバーンは23歳。新人女優でありながら主役に大抜擢され、お忍びでローマの市街を冒険的に巡る王女を見事に演じた。今も同じか知らないが、映画のシーンのように、ベスパというスクーターに男女が二人乗りして、スペイン広場の階段でジェラートを食べるのが伝説的な流行となった。
▼不思議に思ったのは、映画の冒頭、王女の足元がアップになり、きゅうくつな靴に痛がる様子が、両足の動きで表現される場面だ。後でサンダルに履き替えることで、王女がひと時の自由を得たことを示すのだと、ずいぶん後年になって分かった。王女さまでなくても、人の運命は、本来きゅうくつなものかも知れない。
▼このまま映画の思い出を話していられたら、どんなに良いだろう。周知の通り、イタリアは今、大変なことになっている。中共ウイルスは欧州各国にも飛び火して、スペイン、フランス、イギリス、オランダも深刻な情況になりつつある。
▼ウイルスの病禍が顕著に表れている国は「中国共産党に親密であった国」。帰納的結論として、それが人類の前に明示された。一帯一路のイタリアばかりではない。アフリカ諸国も、自国の利権を切り売りして、中国から多額の投資を受けている。今後の悪夢が的中しないことを祈る。