掛谷英紀コラム
自分勝手な左翼・自集団勝手な右翼
リチャード・ドーキンズが『利己的な遺伝子』を著したのは1976年である。私がこの本を読んだのは大学1年生のときだが、人生で最も影響を受けた本の一つである。人間の行動を決定づけるのは遺伝子と文化子(ミーム)である。遺伝子で規定された行動は生得的に決まっているが、人間には生後、教育等を通じて定まる行動パターンもある。遺伝子、文化子のいずれに基づく行動も、その持ち主が生き残るようなものでなければ後世に残っていかない。一見、自己犠牲に見える行動も、同じ遺伝子や文化子を持つものが生き残るような犠牲でなければ、その行動の持ち主はこの世から消えてなくなる。この発見は、その後進化ゲーム理論という一大学問分野を生み出した。
進化ゲームについては、これまでも面白い研究が多数行われてきた。マット・リドレーは著書『徳の起源』の中で、道徳も集団が生き残るために生まれたものだという議論を展開している。さらに、大浦宏邦著『人間行動に潜むジレンマ―自分勝手はやめられない?』には、大変興味深い研究が紹介されている。
進化ゲーム理論においては、各行動がもたらすコストと報酬、および各個体の生き残りの条件をルールとして定め、どの行動戦略をとるものが最も生き残りやすいかを計算機シミュレーションや社会心理実験などを通して調べる。そこで分かったことの一つは、人間の生き残り戦略は自分勝手戦略と自集団勝手戦略に大別されるということである。
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1月5日の米国ジョージア州上院議員決選投票で、民主党が2議席とも確保し、上院で民主党が過半数(議長の副大統領票を含む)を確保した。1月6日にはジョー・バイデンが正式に次期大統領として議会に承認された。これで、大統領は民主党、議会も上院、下院ともに民主党が過半数というトリプルブルーの状態が確定した。日本にとっては悪夢である。
前回のコラム『今必要なのは「中国から国民を守る党」』で述べた通り、バイデン政権の誕生が確実になり、日本の親中派は勢いづいている。12月14日に全日空が成田ー深圳路線を再開したのに続き、12月18日に国土交通省は、12月21日から中国・韓国便の到着を新千歳空港にも認める通知をした。
日本では早速、バイデン当確による悪影響が出始めている。米国の対中強硬政策が緩和されることを見越して、日本の親中派が勢いづいている。中国を含む自由貿易協定RCEPへの加入や中国とのビジネスを目的とした往来の再開がそれを象徴している。今年の春節に来日した中国人旅行者に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を持ち込まれて、今も感染者が再度急増している中、往来を再開するとは非常識極まりない。そもそも、中国におけるウイルスの発生源は現時点でも全く分かっていない。今、何よりも中国に求めるべきは、国際的
米国大統領選の決着がもつれている。誰が大統領になるかはまだ分からないが、一つだけはっきりしたことがある。バイデンが圧勝すると予想していた大手メディアはみな大ウソつきだったことだ。しかし、相変わらず彼らに反省の気配はない。彼らは我々と違い、己の不明を恥じるという思考回路が脳から欠落していると解釈するしかないだろう。
新型コロナウイルスのパンデミックで社会のリセットが起きている今、ポストコロナの時代に日本の大学がポリコレ難民を受け入れるという構想を検討するよい機会である。