ホーチミンのバナナ売り(左)(大紀元)
【ショート・エッセイ】

アオザイと微笑みの国へ

ホーチミン市となった今は、もちろん平和な町になった。最近そこへ行ってきた知人の話によると、道路にはバイクや自転車があふれ、活気に満ちていたという。

 それでもサイゴンという旧名が、今も頭から抜けないでいる。政治的な意味ではもちろんない。世界地図を眺めるのが好きだった小学生の頃から「ベトナムは南北に分かれていた」という地図上の印象と、ニュース速報で飛び込んできた「サイゴン陥落」の強烈な記憶が、数十年を経た今も残っているからなのだ。

 ミュージカル「ミス・サイゴン」のクライマックスでは、凄まじい爆音とともにステージ上にヘリコプターが降下してくる。サイゴンに最後まで残っていた米国人をあわてて飲み込んだヘリコプターは、手に証明書を持ち、金網ごしに助けを求めて叫ぶ群集を見捨てて、逃げるように飛び去るのである。

▶ 続きを読む
関連記事
身近な卵が、実は脳や筋肉、目の健康まで支える完全栄養食だと知っていますか?最新研究と実用的なコツから、卵の本当の力と毎日の取り入れ方を分かりやすく紹介します。
第一次世界大戦の塹壕で、敵同士の兵士が同じクリスマスの賛美歌を歌い、銃を置いた夜があった。天使ではなく、人の声が「地に平和あれ」を響かせた奇跡の物語
冬の冷えで不調を感じやすい季節に。中医学の考え方から、腎を温め心と脳を守る「にらラーメン」を解説。身近な食材でできる、冬の養生をやさしく学べる一編です。
抗うつ薬は本当に「脳の不調」を治しているのか。元FDA医師が、化学的不均衡説の限界と長期投薬のリスクを指摘し、うつ病治療を根本から見直す必要性を訴えます。
なぜ私たちは、気づかぬうちにネガティブ思考の渦に飲み込まれてしまうのか。脳科学と最新研究から「絶望のループ」の正体をひもとき、抜け出すための具体的なヒントを探ります。