アングル:勢いづく香港若手民主派、「北京の影」が反中に追い風

[香港 15日 ロイター] – 中国政府が香港国家安全維持法(国安法)を通じて香港への統制を強める中、香港の若手民主派が政治改革に強い意欲を示しており、有権者の支持を集めている。

週末に実施された9月の香港立法会(議会)選挙に向けた民主派予備選では、一部の選挙区で急進派の若手候補者が躍進。現職の立法会議員など一部の伝統的なベテランの民主派は支持が低迷した。

存在感が目立つのが、自らを中国人とはみなさず、香港の自由の維持を重視する急進的な「本土派」だ。

白いスニーカーに黒服といういで立ちで地下鉄駅前でビラを配る張崑陽氏(24)は「邪悪な体制に立ち向かう」ため、米ジョンズ・ホプキンス大学への留学の機会を捨てた。

同氏は「今の時代、古い政治家の伝統的な手法では意味がない」と発言。若い世代は反政府デモで活気づいており、「抵抗」を支持していると語る。

国安法では、香港の独立を訴えた場合、終身刑に問われる可能性があり、立法会選挙でそうした姿勢を掲げる民主派候補が出てくるかは現時点で不明だ。一部の民主派は、国安法の施行で公の場での発言が制限されていると話す。

予備選の主催者の1人で、元立法会議員の區諾軒氏は14日、予備選は合法的だとしながらも、予備選運営から退く意向を示した。

予備選では、香港の人口の約8%に相当する61万人以上が投票。主催者によると、一部の選挙区では最大75%の投票者が「本土派」や「抗争派」を支持した。

<変化の時代>

民主派は、反中感情を追い風に9月の立法会選挙で初の過半数獲得を目指す。

予備選で脱落した現職の立法会議員、黃碧雲氏(61)は「新しい世代が今の世論の怒りの声に応え、新しい手法とイデオロギーで立法会で戦うことを期待する」と述べた。

今回の予備選では、穏健な民主化を呼び掛けた現職の立法会議員など、一部の伝統的なベテラン民主派の支持が低迷した。若い有権者の支持を得られなかったことが背景だ。

ある学生は「伝統的な民主派はもう信用しない。変化を起こせなかった」と述べた。

本土派の間で高い支持を集めているのが、元独立派の政治活動家、梁天琦氏だ。同氏は暴動罪で6年の禁固刑を言い渡され、2016年に収監されている。

BMWのオープンカーに拡声器を取り付けて選挙運動を展開した鄒家成氏(23)は「梁天琦氏は香港人の精神的な支柱になっている。私も含め、多くの人が影響を受けた」と発言。「私たちは変化の時代に入った」と述べた。

立法会選挙の立候補の届け出は今月18日から始まるが、政治アナリストは、大量の候補者が立候補を認められない事態となれば、新たな抗議活動が起きる恐れがあると指摘する。

張崑陽氏は「香港最悪の暗黒期だと言う人は多い」とし「どの道が100%効果的なのかはわからない。実際のところ、何も確信を持てない。あらゆることを試す必要がある」と語った。

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