コロナ感染疑いの脱北者、性的暴行容疑で逮捕状 仲間に借金も

[ソウル 28日 ロイター] – 北朝鮮が発表した新型コロナウイルスに感染した疑いがある脱北者について、韓国当局は2017年に韓国に亡命し、先週、北朝鮮に戻ったと説明している。この脱北者には、韓国で性的暴行で逮捕状が出ていたとされるが、詳しい背景などはまだ分かっていない。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)は26日、新型コロナ感染が疑われる脱北者が北朝鮮に戻ったとし、金正恩朝鮮労働党委員長が南北境界線付近の開城(ケソン)市を封鎖、非常事態を宣言したと報じた。

韓国は、北朝鮮に戻った脱北者の男について、名字を「キム」と特定。排水管を伝って漢江(ハンガン)に出て、泳いで北朝鮮側に渡ったしている。

韓国軍の朴漢基(パク・ハンギ)合同参謀本部議長は28日、議会で、身長163センチ、体重54キロのキムという男性が、下水管から漢江に出たと説明した。

韓国政府当局者はロイターに、キムは2017年に北朝鮮を脱出した時も同じ経路に韓国に入ったとみられると語った。

韓国警察によると、7月12日、20代の脱北者の女性がキムの家で彼に性的暴行を受けたと申し立てた。警察は21日にキムを一度聴取したが、容疑を否定したという。

しかし、キムの知り合いが19日に警察に、彼がその女性を脅し、北朝鮮への逃亡を計画していると通報。2日後にキムへの逮捕状が出た。しかし、このころにはキムはすでに北朝鮮に渡っていた。KCNAは、キムとされる脱北者を24日までに開城(ケソン)市で発見したとしている。

韓国の保健当局は、キムが韓国を離れる前に感染していた形跡はないと指摘。キムの濃厚接触者のうち少なくとも2人は検査で陰性反応が出たとしている。

<チャンス求めて韓国へ>

キムは6月、脱北者の仲間が撮影し、ユーチューブに投稿された動画で、韓国にわたった事情を説明している。

2016年、北朝鮮が核実験などを実施して南北関係が緊張、共同事業の開城(ケソン)工業団地が閉鎖された。経済的に困窮したキムは、韓国で活路見出そうと決意したという。

韓国でどのように生計を立てていたかはほとんど分かっていない。彼の素性を知るある人物は、開城から韓国に亡命した脱北者の少なくとも1人に2000万ウォン(1万6800ドル)の借金をしていたという。

この人物は「彼は多くの脱北者と同じく、安全保障関連の教師になりたいと考えていたが、パンデミックもあって実現しなかった」と語った。

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