【紀元曙光】2020年10月5日

40年近く前のこと。1980年代に、小欄の筆者は、留学もふくめて何度か中国へ行った。

▼思えば懐かしいが、当時はまだ中国共産党の悪魔性に対する認識もなく、おいしいものを食べて楽しむだけの無知な学生であった。ただ、中国の各地を一人で旅行した青春は、ゴビ砂漠で拾った一粒のエメラルドのように、筆者の人生のなかで今も輝いている。

▼もとより本好きなので、中国ではよく書店に立ち寄った。今はどうだか知らないが、書店は全国どこでも「新華書店」といった。ほかに「外文書店」というのもあって、そこでは外国語の教材のほかに、高価な外国の書籍を無断コピーした海賊版が売られていた。海賊版があるのは別室で、外国人客は入れない。日本人である筆者は「中国人」を装って入った。

▼当時の書店には、これも売り物の一種だが、容姿をかなり美化した大きな肖像画が掲げられていた。マルクス、レーニン、毛沢東、周恩来といった連中である。中ソ蜜月時代はとうの昔に過ぎていたので、スターリンの肖像画はなかった。

▼さて、その肖像画にもあった周恩来という人物。ある意味、毛沢東よりも卑劣で残忍な男と言われている。いや正確に言えば、そのように否定的に評価されるようになったのは後年のことで、この周恩来ほど自己の伝説化に成功したものはいないだろう。

▼文化大革命の狂気が燃えさかる中、養女である孫維世が獄中で惨殺されるのを、周恩来は見殺しにした。今の日本人の中で、まだ周恩来を崇敬する人がいるだろうか。いるとすれば、恐縮ながら「重症患者」と申さねばならない。

関連記事
最新の研究によれば、コーヒーに含まれる自然由来の成分が、年齢とともに起こる筋肉減少を防ぐための秘密兵器となるかもしれないのです。
人生の黄金期に入り、コストが低く快適な退職生活を送ることができる場所を選ぶことは非常に重要です。幸い、地球上にはアメリカよりも生活費が低い国が多くあり、その中の7カ国では、月に10~13万円前後の支出で楽しい退職生活を送ることができます。
多くの人が長生きして幸せになりたいと願っていることでしょう。これはどこの国の人にとっても共通の願いです。実は長 […]
アメリカのリーバイス(Levi’s)は、デニム生地とジーンズの製造で有名であり、その製品は世界中で販売されています。ジーンズをいつ洗うべきかという問題に対して、同社の最高経営責任者が自身の考えを表明しました。
古代中国では、二輪の戦車は戦場に欠かせない乗り物でした。紀元前2000年ごろの夏(か)の時代に現れ、歩兵や武器を戦場で移動するために使われました。