(Temari/Creative Commons)
≪医山夜話≫ (29)

反省

デニスは全身の関節と筋肉が痛くて、両手を使ってもコップさえ持ち上げられない状態でした。眉をひそめている彼女はすでに老人のように見えますが、実際はまだ45歳でした。

 腕の痛みは通常、職業と関係があるので、私は彼女の仕事を尋ねました。彼女は頭を振って、「腕の痛みは仕事と関係ありません」と言いました。彼女の表情を見ると、「苦しみに浸す」という中国の昔の言葉を思い出しました。茫然としている彼女の涙目を見ると、誰もが悲しくなり、同情を禁じえません。

 彼女のカルテを開けると、「鍼は怖い。できればしたくない」という彼女の字とその下に引かれた太いアンダーラインが目に映りました。一瞬、二人とも沈黙に陥りました。彼女の痛みはきっと我慢の限界まで来ていたこと、彼女がどれほど鍼を恐れていたのかが、すべてその一行から伝わってきました。

▶ 続きを読む
関連記事
なぜ私たちは、気づかぬうちにネガティブ思考の渦に飲み込まれてしまうのか。脳科学と最新研究から「絶望のループ」の正体をひもとき、抜け出すための具体的なヒントを探ります。
101歳で運転も世界旅行も現役──栄養学者が語る、遺伝ではなく「7つの生活習慣」こそが長寿の鍵。誰でも実践できるシンプルな秘訣が詰まっています。
毎日使う鍋や食器が、知らずに体へ影響しているかもしれません。がんを克服した教授が実践する「無毒キッチン」の知恵を通して、今日からできる安心な選び方と食習慣を学べる一編です。
金価格が高止まりする中、富裕層は地金を保管するだけでなく、貸し出して収益を得る動きを強めています。金で利息を受け取るゴールドリースは、インフレ対策と資産活用を両立する手法として注目されています。
自閉症は一つではなかった――。最新の国際研究が、早期診断と遅発診断で遺伝背景や発達経路が異なることを解明。支援やスクリーニングの在り方を見直す重要な知見です。