チベットの光 (38) 泣き菩薩

  ウェンシーが師父の家を出ると、その道すがらは恍惚として、師母にいとまを言ってこなかったことが思い出された。師母は実の母親のようによくしてくれたので、一言もなかったことが心苦しかったのである。戻ろうかと思ったが、師父を思うと、また叱られるのではないかと恐れ、戻る勇気が湧いてこなかった。

 昼になると、彼はとある民家に立ち寄りツァンバを無心した。家の主人は、彼の身体が壮健であるのを見て、ツァンバを与えて彼に言った。

 「お若いの、何が悲しくて人の家で物乞いをしているのかな?」

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