アングル:日米首脳会談、対中圧力での連携探る 政権浮揚に懸念材料も

竹本能文

[東京 13日 ロイター] – 菅義偉首相は16日、ワシントンでバイデン米大統領と会談する。日本政府は、バイデン政権発足後、初の対面での首脳会談が実現することをアピールし、政権浮揚に繋げたい考えだ。米国側は中国包囲網形成で日本の協力に期待しており、首脳会談を受けて、日本企業への影響が広がることを懸念する声も出ている。

<米国、対中国・再生エネルギーでの連携を期待>

首脳会談後、日米両政府は共同文書を出す方向で調整を進めている。共同文書は1)安全保障、2)気候変動問題、3)サプライチェーンや新技術など経済協力、の3分野への言及が軸となる。

バイデン政権としては、対中包囲網の形成で日米同盟の強固な連携を確認するのが最大の狙いだ。共同文書では、台湾海峡の平和と安全の重要性や、香港や新疆ウイグル自治区の人権状況に関する懸念も表記する方向だ。米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条の沖縄県・尖閣諸島への適用も明記する。

ただ、台湾海峡や尖閣諸島の有事における日本側の活動内容について、会談では「具体的な議論は表面化させない見通し」(政府・与党関係者)だ。

気候変動問題では22日に予定されている気候変動サミットを控え、再生可能エネルギー分野での連携を確認する。日本政府内では2030年の温室効果ガスの排出を2013年比で26%削減という現在の目標から上積みする議論が進んでおり、方向性を共有する。「米国内での再生エネルギー拡充でも日本との協力が議論される」(同)見通し。

サプライチェーンの多元性を確保するため、半導体やレアメタル・レアアース調達でも連携する。次世代通信5Gや人工知能(AI)の分野でも連携を確認する。

<日本企業への影響リスク>

菅首相側はバイデン政権の発足以降、早期の訪米を目標に掲げてきた。昨年9月の就任時は高水準だった内閣支持率が新型コロナウイルスの感染再拡大や相次ぐ不祥事で急落。春以降の政局も取りざたされるなか、日米外務・防衛閣僚会議(2プラス2)など、周到に準備を進めてきた。英国のジョンソン首相よりも先に米大統領との対面会談を実現できるのは「それ自体が外交成果」(与党幹部)とされる。

ただ、成果を得る半面、焦点となるのが中国をめぐる議論だ。日米両国が3月に東京で開催した日米2プラス2では香港や新疆ウイグルでの人権状況に対する懸念を文書で表明。直後に中国外務省は日本を「戦略的属国」と激しく非難した経緯がある。

政権内では、欧米諸国が人権問題で対中制裁に踏み切るなか、日本として文書での明確な非難を避ければ「米国から日本が制裁を受けかねない」(政府関係者)と懸念する声がある。政府内では日中、日米、米中の貿易の量と質を分析し、「中国が日本からの輸入制限などを課しても、日本のハイテク部品調達不足により中国側に障害となる」(同)との見解もみられる。

一方で公明党の山口那津男代表は13日、「日本と中国は製造業や流通を含め広範で長い、深い関係がある。日本の企業の利益や国益が大きく傷付かないような配慮を念頭に置いて、(日米首脳)会談も実りあるものにしてほしい」とくぎを刺した。

みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「欧米同様の対中経済制裁への参加を回避できるのであれば日系企業の中国合弁差し押さえや、日本から中国への重要部品輸出停止は免れるだろう」と指摘。一方で「共同文書に中国人権問題が明記されるのであれば、消費者関連企業への中国での不買運動など、様々な影響が生じる可能性がある」と分析している。

*カテゴリーを変更して再送します。

 

(竹本能文 編集:石田仁志)

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