【医学古今】

現代人に嫌われる打膿灸

打膿灸(だのうきゅう)は中国で化膿灸(かのうきゅう)、或いは瘢痕灸(はんこうきゅう)と呼ばれ、古代によく使われた灸療方法の一つです。この治療効果は非常に高いのですが、現代人にはあまり人気がないようです。

 打膿灸とは、大豆ぐらい大きさのモグサを背中や腹、足などの施灸部位に数回施灸した後、その部位に膏薬を塗り、灸痕の化膿を促して排膿させるという方法です。古代には腫瘍、脈管炎、喘息、慢性胃腸疾患、慢性ウイルス性肝炎、頻尿と遺尿、腰痛症や関節痛、高血圧症、肺結核、虚弱体質、冷え症、不妊症などにこの方法が広く使われていました。しかし、現代では中国でこの方法を使う人は少なくなり、日本では東京都墨田区の遍照院灸点所、大阪市南区の無量寺などの灸点所しか行われていないようです。

 この方法があまり普及しない原因としては、直接皮膚を火傷させるため、かなりの痛みがあることや、施灸後2週間ぐらいは膿を排出するため、日常生活に困難をきたすことなどが挙げられます。また、皮膚に痕が残ってしまうことも嫌われる原因となっています。

▶ 続きを読む
関連記事
なぜ私たちは、気づかぬうちにネガティブ思考の渦に飲み込まれてしまうのか。脳科学と最新研究から「絶望のループ」の正体をひもとき、抜け出すための具体的なヒントを探ります。
101歳で運転も世界旅行も現役──栄養学者が語る、遺伝ではなく「7つの生活習慣」こそが長寿の鍵。誰でも実践できるシンプルな秘訣が詰まっています。
毎日使う鍋や食器が、知らずに体へ影響しているかもしれません。がんを克服した教授が実践する「無毒キッチン」の知恵を通して、今日からできる安心な選び方と食習慣を学べる一編です。
金価格が高止まりする中、富裕層は地金を保管するだけでなく、貸し出して収益を得る動きを強めています。金で利息を受け取るゴールドリースは、インフレ対策と資産活用を両立する手法として注目されています。
自閉症は一つではなかった――。最新の国際研究が、早期診断と遅発診断で遺伝背景や発達経路が異なることを解明。支援やスクリーニングの在り方を見直す重要な知見です。