チベットの光 (58) 精進苦修の誓い

去りゆく叔母の後姿を見るミラレパの心の中には、一種強烈な悲哀が広がっていた。彼の心には、さまざまなものが交錯していた。ジェサイが彼にした話、母親と妹の悲惨な命運、叔父の彼に対する怨恨、叔母の悪行、これらのことに思い至るとき、すでに数年が経過しているというのに、叔父は自分のしたことを棚上げにして、自分の受けた苦痛をまだ根に持っている。叔父の怨恨は、すでに叔父の心と人生全体を浸蝕していた。彼が生きているのはミラレパに復讐するためであり、彼はその怨恨の苦しみから抜け出せずにいた。叔母もまた相も変わらず貪欲で、その心根は悪いものであったのだ。

 ミラレパは彼らを見るにつけ、世間の人は実に憐れだと思った。わずかばかりの物質的利益のために嘘をついて人を騙し、心中の喜怒哀楽を掴んで放さず、その実これにしがみついて、がんじがらめになってその檻から出られないのだ。

 「ああ、世間のことは、大体がこのようなものだ。人は世に生きていて、何が面白いというのだろうか。まるで子供の遊びではないか」。ミラレパは嘆いた。心の中では世間に対する執着はなかった。彼は、自らの地所を放棄すると決めた後、まるで心の中の石の塊を取り出したようで、すぐに自由な気持ちとなり、心にはなにも心配事もなく、微笑みさえ浮かんできて、すぐにフマパイの洞窟に行って、そこで修行することにした。

▶ 続きを読む
関連記事
太陽光は、気分に関わる脳内物質や体内時計、ビタミンDの生成に関係しています。安全に日光を浴びることは、心の健康や睡眠を支える習慣の一つです。
器具もジムも不要。家にある枕ひとつで全身を鍛えられる5つのエクササイズを理学療法士が紹介。寝る前や起き抜けに、ベッドの上からでも始められます
コーヒーは体に良いのか、悪いのか。アメリカ心臓協会は、成人のカフェイン摂取量と心臓への影響について新たな見解を示しました。
中医学では、顔色、目の下のクマ、唇や舌の色、あご周りの変化などを、体調を知る手がかりの一つと考えます。診断ではなく、健康を見直すサインとして紹介します。
音や音楽は、気分だけでなく心拍やストレス、睡眠にも関わる可能性があります。音楽療法と音による癒しの違い、日常での取り入れ方を紹介します。