【医学古今】
掌蹠膿疱症の鍼灸治療
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は原因不明の難治性病気の一つです。その主な症状は、膿疱と呼ばれる皮疹が手掌や足の裏(足蹠)に数多く発生し、周期的に悪化と改善を繰り返します。皮疹の出始めはとても痒く、酷い場合は痛みを感じる時もあります。また、この病気の特徴の一つに、胸部と背中に強い圧痛点が現れることが挙げられます。残念ながら、現代医学では有効な治療法が確立されていないのが現状ですが、症状が数年間続いた後に自然治癒することも多い病気です。
漢方医学の観点から診ると、掌蹠膿疱症は心胸部に潜んでいる温熱の邪気によって起こった症状です。この邪気は、温熱が引き起こした風邪が治癒した後、体内に残ってしまったものである可能性が高く、漢方医学ではこれを「余邪」と呼びます。邪気の量が少ないため心胸部に症状を起こす力は無く、手の太陰肺経、手の少陰心経、手の厥陰心包経の経絡に沿って掌に流れて行き、膿疱疹を起こすのです。更に、臓腑五行理論から考えると、肺は腎の母で、肺の邪気は腎に流れやすいので、腎に邪気が溜まると足の少陰腎経の経絡を沿って足の裏に流れて行き、そこに発疹を起こします。胸部と背中に強い圧痛点が現れるのは、心胸部に邪気があることを示しているのです。
治療法としては、心胸部の邪熱を取り除く漢方薬の服用も効果がありますが、鍼灸治療でも効果が得られます。鍼灸治療の場合は手の太陰肺経、手の少陰心経、手の厥陰心包経、足の少陰腎経の榮穴と兪穴をよく使います。榮穴は臓腑の熱を取り除く効果があり、兪穴は臓腑の機能を調節する効果があるため、併せて取穴することによって「温熱の余邪」を取り除き、臓腑機能を回復させることができます。更に胸部と背中の圧痛点に刺鍼すれば、邪気をより追い出しやすくなります。
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