薬食同源 

塩の薬用効果

を薬として使用した歴史は意外にも古く、2千年前に編集された「神農奔走協」にはすでに、塩は死力を増し、気を益し、肌骨を強くし、肌膚を柔らかにし、毒虫を去る効果があると記載されています。

また、1400年前に編集された『本草綱目』にも食塩の薬用効果が詳しく記載されています。その記載によると、食塩は胃腸に溜まった熱、胸中に溜まった痰濁、急な腹痛、外陰部の潰瘍、皮膚の湿疹、食滞(過食による消化不良)、大便と小便の不利等を治療することができます。以下に、具体的な使い方を数例紹介します。

催吐薬として

吐法は漢方治療八法(汗法、吐法、下法、和法、温法、清法、消法、補法)の一つです。吐法は胃の内容物を吐き出すだけでなく、胃や心胸部に溜まっている寒熱、痰濁、食滞などの邪気を吐き出すための療法で、胃や心胸部の痞(つか)え、痛み、咳、喘息、膨満感、息切れ等の症状が治療できます。

塩を用いた吐法は以下の通りです。300mlの水に食塩を100g入れて5分ほど沸かし、飲用できる温度まで冷ましてから一気に飲み込みます。暫くすると吐き出したくなるので、そのまま吐き出してください。吐き出せない場合は、再度同じように行います。

吐法を行った後数日間は、お粥のような消化しやすい物を食べて養生してください。

虚脱治療に

四肢の冷え、意識朦朧、下腹部痛、冷や汗、息切れ等の陽気の虚脱症状には、炒めた塩を布で包み、臍下の気海に置いて温めると効果があります。

筋肉のひきつりに

肝気が不足し、更に風寒の邪気が筋肉に侵入してひきつりを起こした場合は、塩を入れたお湯で身体を温めると症状が緩和します。

水虫治療に

食塩1kgを蒸し、熱いうちにタオルで包みます。包みを足元に置き、足で塩の包みを踏んだまま寝ると、水虫に効果があります。また、爪先から膝までの部分に水で湿らせた塩を塗り付け、5分ほど置いて温水で洗い流す方法も水虫治療になります。毎晩行うと、より良い効果が得られるでしょう。

小便の不通に

水で濡らした和紙で塩を包み、炭火で焼きます。焼いた塩を極少量、尿道孔の中に吹き込むと、小便が流れ出てきます。

歯根露出に

歯肉が委縮して歯根が露出した場合も、塩で治療できます。毎朝、粒状の塩を嘗めながら温水で100回口をすすぐと、5日程度で効果が現れるでしょう。

耳痛、耳鳴に

急性の耳痛や耳鳴にも塩が効果的です。適量の塩を蒸し、タオルで包んで耳の下に置いて寝ると症状が改善されます。

ムカデに噛まれた時に

ムカデに噛まれてしまった時は、口に入れて噛んだ塩を傷口に塗り付けると早く傷が癒えます。傷口を温かい塩水に浸けるのも効果的です。

(漢方医師・甄 立学)