「モルガン氏の宝石箱」アメリカで再現されたヨーロッパの古典建築

ニューヨーク・マンハッタンのマディソン・アベニューには、イタリア・ルネサンス期の別荘のような外観でありながら、古代のギリシャやローマおよび文芸復興といった、異なる時代の建築様式や芸術を鑑賞できる独特な建物があります。それは、有名な銀行家ジョン・ピアポント・モルガン氏の私設図書館の、モルガン・ライブラリーです。

この図書館は、チャールズ・フォレン・マッキム氏によって設計されました。

マッキム氏は、ハーバード大学とパリ国立高等美術学校で厳格な建築教育を受け、アメリカ新古典主義の復興に力を注いだ代表的な建築家です。マッキム氏は、ヨーロッパとアメリカの建築界における架け橋のような存在で、長い歴史を誇るヨーロッパの建築芸術をアメリカにもたらしました。

マッキム氏は、モルガン・ライブラリーの設計において、ヴィラ・ジュリアとヴィラ・メディチという16世紀のローマの古典的な建築をコンセプトにしました。

建物の外壁には、テネシー州産の大理石が使用されています。入口の扉の前には、古代ギリシャの建築様式の1つであるイオニア式の4本の柱が、パッラーディオ式のアーチを支えており、エレガントなエントランスが設計されています。

建物の中に入ると、1904年当時の人々がこの図書館を「モルガン氏の宝石箱」と呼んだ理由がよく分かります。ラピスラズリの柱、モザイクの壁、大理石のパネルが、建物の中央にあるロタンダを美しく飾っています。天井のフレスコ画には、ホメロス、ダンテ、ペトラルカなどの有名な文学者が数多く描かれており、来場者は、古代の巨匠たちとの文学的な出会いを期待することができます。

中央にあるロタンダは、西館(モルガンの書斎)、東館(モルガン・ライブラリー)、北館(かつて図書館の初代館長のオフィス)の3つの部屋につながっています。

西側にあるモルガンの書斎は、深紅の絹織物のような壁装材がほどこされています。この部屋は、ルネサンス期の銀行家であるアゴスティーノ・キージ氏のローマの邸宅「ヴィラ・チギ」をイメージしたものです。豊かな深紅の色彩と、16世紀の格子模様の木の天井が壮麗な雰囲気を醸し出し、モルガン氏の貴重なコレクションの価値を際立たせています。

また、東側にあるモルガン・ライブラリーでは、高さ30フィート(約9メートル)のチェルクス・ウォールナット材の書棚が床から天井までの空間を取り囲み、来場者を本の世界へと誘ってくれます。天井には、有名な装飾画家のハリー・シドンス・モーブレー氏の壁画があり、よく見るとソクラテス、ガリレオ、ボッティチェルリ、ミケランジェロなどの人物像を見ることができます。

最後に、北館では、モルガン氏の古代オリエント、エジプト、ローマ、ギリシャおよびそれ以降のコレクションが展示されており、その中には紀元前3500年頃の絵画が刻まれた、近東の円筒印章のセットも含まれています。

(翻訳 楊健)