菅義偉首相は5日開かれた政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で、福島・茨城・栃木・群馬・静岡・愛知・滋賀・熊本の8県に新型コロナウイルスまん延防止等重点措置を適用すると正式発表した。期間は今月8日から31日まで。写真は7月22日、福島県で撮影(2021年 ロイター/Jorge Silva)

まん延防止措置8県追加 「入院は医師が判断」と首相

[東京 5日 ロイター] – 政府は5日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、茨城、栃木、群馬などの8県に「まん延防止等重点措置」を適用することを決めた。菅義偉首相が正式に表明した。与野党から批判が出ていたコロナ患者の入院に関する政府方針について、菅首相は、中等症でも酸素投与が必要な患者や重症化リスクのある患者は入院の対象になる、とし、入院は医師の判断による、との方針を強調した。

新たに重点措置の対象となるのは北関東3県のほか、福島、静岡、愛知、滋賀、熊本の各県。適用期間は、いずれも今月8日から31日までとする。菅首相は対策本部後の会見で、各県の感染者数や病床の状況を総合的に判断したと説明した。

政府は、東京や大阪など6都府県に緊急事態宣言を出し、北海道や京都府など5道府県に重点措置を適用している。今回の決定で重点措置の対象区域は13道府県に広がる。菅首相は、全国の拠点となる地域で感染者数の増加を抑制することに主眼に対策しており、緊急事態宣言について「全国的にということは考えていない」と語った。

東京都は5日、過去最多となる5042人のコロナ感染が確認されたと発表した。新規感染確認者は4日の4166人を上回り、連日の過去最多更新となっている。

<コロナ患者の入院、「医師が判断」>

菅首相はコロナ対策本部で、コロナ患者の入院要件に関する政府の新方針について、感染者の急増地域で誰もが症状に応じて必要な医療を受けられるように取りまとめたものだと説明。これは「全国一律のものではない」と述べた。

さらに、中等症で酸素投与が必要な人、投与が必要でなくても重症化リスクのある人は入院の対象になる、とし、入院は医師の判断によるとの方針を強調した。自宅にいる患者についても小まめに状態を把握して症状が悪化したらすぐに入院できる体制をつくると語った。

<公明党からも厳しい指摘>

入院の要件に関する新しい政府の方針について、菅首相は2日に「重症と重症リスクが高い患者」と定義を示した。

これに対して、中等症患者の入院拒否と解釈可能なことから与野党から批判が相次ぎ、4日の衆院厚生労働委員会閉会中審査では、公明党の高木美智代委員は「酸素吸入が必要な中等症患者を、自宅で診ることはあり得ない」とし「検討し直して欲しい」と撤回を求めた経緯がある。

菅首相は4日、「入院基準について自民党内からも撤回を求める声が挙がっている」との記者団の指摘に対して「撤回ということではなく、しっかり説明するようにということだ」と述べていた。

西村康稔経済再生相が7月、東京都に緊急事態宣言を再発令した際、酒の提供を続ける飲食店に金融機関や酒類販売業者を通じて圧力をかける考えを明らかにし、業界団体の反発を受けた自民党が見直しを要求し、撤回させており、コロナ対策で政府の方針転換が相次いでいる。

<全国的に厳しい状況>

西村康稔経済再生担当相は同日午前に行った政府の基本的対処方針分科会で、1日当たりの全国の新規陽性者数が過去最多を更新している現状に「これまでに経験したことがないような、桁違いな急速な増加を続けている」と述べた。「感染力が強いデルタ株が首都圏で9割を占め、局面が変わってきている」との認識も示し、「危機感を共有し、対策を徹底する必要がある」と理解を求めた。

西村氏は、分科会後の会見で、分科会メンバーから「全国に緊急事態宣言を出すくらい厳しい状況にあるとの意見を頂いた」とし、「全国的に厳しい状況にあるとの危機感を専門家と共有した」と記者団に述べた。その上で「大都市圏から地方への移動は、できる限り控えて頂きたい」と呼び掛けた。

(杉山健太郎、竹本能文)

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