【掌編小説】岐路で泣く 『蒙求』より

楊朱(ようしゅ)は、その分岐点に立ったまま、もう久しく泣いていた。

長い一本道を歩いてきたが、少し視界が開けた老松のある場所に至ると、そこから道が北と南へ分かれていた。南北それぞれの道が、まるで別の宇宙へ続くように、千万里の果てまで伸びているのだ。

楊朱は、南北へ分かれ去ってゆく道のありさまが、あまりに悲しくて、そこで泣いていたのである。

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