糖尿病をもつ医師から皆さんへ「自己管理4つの要点」

「医者の不養生」ということわざがあります。
患者に養生を説きながら、自身が不摂生であるため、病気になってしまう医者のことです。同類の言葉として「紺屋の白袴」「坊主の不信心」などがあり、いずれも専門職でありながら自身がお手本にならない人を、すこし揶揄していう場合に使います。

もちろん冗談の範囲内なのですが、なぜそれが冗談で済むかというと、「医者も人なのだから、病気になることはある」ことを誰もが知っているからです。

★ 病を想定した「そうならないための心構え」

生活習慣病といわれる一群の疾病は、確かに自身の生活や食事を改善することで、ある程度リスクを減らすことができます。
しかし生活習慣病に限らず、そもそも病気というものは、たとえ注意していても(ワクチン接種をふくめて)罹患リスクをゼロにすることはできません。罹るときは罹るのです。

だからこそ私たちは、病(やまい)で寿命を縮めたり、人生が不如意になる不幸を極力避けるため、事後の医療に頼るだけでなく、普段から努めて健康を維持しなければなりません。

例えば、まだ糖尿病ではない方も、ときには「我が身に病がある」と仮定して、そのとき「自分はどうするのか」を想像してみることも、一つの心構えとして有益なのではないでしょうか。

台湾の桃園市にある林口長庚医院の林嘉鴻氏は、糖尿病治療の専門医です。
また林医師は、自身が早くから2型糖尿病に罹り、インスリン投与を30年近く続けている「患者」でもあります。

以下は、林医師が、まさに「自身の経験と実証」にもとづいて提言する、糖尿病患者および「糖尿病予備軍」と呼ばれる人々へのアドバイスです。そのなかで林医師は、「食事と体重を適切にコントロールすれば、多くの患者は薬を飲む必要がなくなります」と言います。

血糖値の自己管理「4つのポイント」
林医師は、血糖値を自己コントロールするポイントとして、次の4つを挙げています。

1、食べ物の種類と量を知る

6種類の食物と、毎回の食事で摂取すべき分量について、栄養学の知識をもってください。
特にインスリン治療を受けている患者は、投与するインスリンの量を判断するために、毎食の炭水化物をコントロールする必要があります。

分量が正しければ、血糖は理想的な範囲内でコントロールできます。
肉類や油脂類など糖質を含まない他の食品については、摂取カロリーを抑えることで、心血管疾患や肥満の予防に努めてください。

この点に留意すれば、糖尿病患者であっても食事を単調にする必要はありません。食事を楽しむことは、健康を維持する上で大切なことです。

2、食事内容、分量、血糖値をこまめに記録する

血糖値をこまめに測り、毎日の食事と血糖値の変化を記録する習慣をつけるようにしましょう。なるべく毎食後すぐに、食べたものの種類や分量をノートに書くようにします。

もしできなければ、就寝する前に、その日の食事内容を思い出して記録してください。
こうすることにより、医療スタッフが患者の状態を正確に把握し、より精密な食事指導を行うことができます。

血糖値に異常な変化が見られた場合、食事記録と比較してその原因を突き止め、食事内容を調整することもできます。さらには、患者が、自分の状態と食事との関係をより深く理解できるとともに、毎日の努力が望ましい効果につながっていることを実感できるのです。

3、「少量多食」で血糖値を安定させる

空腹感がひどい人、血糖値が変動しやすい人、薬物治療に多く偏っている人に対して、当医院では通常、食事で摂取する総カロリーを変えず、食品の種類と分量のバランスを保つという前提で、「少量多食。朝、昼、晩の3食をきちんと食べる」を提案しています。

食事と食事の間に、どうしてもお腹が空いた場合は、食物繊維が豊富で低油脂、低糖質の果物や全粒粉シリアルなどの自然食品を適量食べることをお勧めします。

4、長期の計画と段階的なアプローチ

糖尿病の患者に不可欠な食事療法は、効果が現れるまで、ある程度長い時間を必要とするものです。長期の計画と、段階的なアプローチのつもりで、根気よく、継続していきましょう。

(訳者注:現在、糖尿病治療を受けている方は、ご担当の医師や栄養士の指導に従うことを第一とし、上記の内容は、ご参考までに留めてください)

(翻訳編集・鳥飼聡)