今から実行したい「脳に良い睡眠」 認知症予防のために 

あなたは一日に、何時間ぐらい寝ますか。
新たな研究では、睡眠時間が短すぎたり、あるいは長すぎたりすると、の健康に悪影響を及ぼし、認知症のリスクが高まると指摘されています。

「寝不足」「寝すぎ」は健康にどんな影響があるか

『アメリカ医学学会誌•神経学』(JAMA Neurology)が8月30日に発表した研究によると、「睡眠時間が短すぎる(長すぎる)ことは、さまざまな潜在的疾病のプロセスに影響を与えるとともに、将来認知症になる可能性を高める」といいます。

この研究には、認知機能の正常なボランティア4417人が参加しています。
彼らの平均年齢は71.3歳で、米国、カナダ、オーストラリア、日本などの67の検査ベースからデータが寄せられました。

研究によると、睡眠時間が6時間以下の人では、アルツハイマー型認知症の原因(現時点では仮説)である脳内の「アミロイドβタンパク質」が増加します。

これについて、研究の主著者であるスタンフォード大学の研究員ジョー・ウィーナー氏は、CNNに「認知症にかかるリスクを大幅に高める」と語っています。

一方、正常な睡眠時間を7~8時間と仮定するならば、「正常な睡眠時間」および「9時間以上の睡眠時間」をとる人は、脳内に大量のアミロイドβタンパク質は認められません。

正常な睡眠時間と比較して、睡眠時間が短すぎたり、長すぎたりすることは、体重の増加、抑うつ症状、日中の眠気と関連していました。また、睡眠時間が長すぎることは、複数の認知領域におけるパフォーマンスの低下と関連しています。

ただし、睡眠時間が長すぎる人は、体を動かして実行に移す能力が緩慢なことに関係していますが、脳内アミロイドβタンパク質のレベルは上がっていません。

ウィーナー氏は、今回の研究の大きな収穫として、「老後は健康な睡眠をとることが必要」および「睡眠時間が少ない人、また逆に、多すぎる人は、体重増加とうつの症状が出る可能性が高くなる」の2点が判明したことだ、といいます。

時間だけでなく「深い眠り」も重要

アミロイドβタンパク質は、正常な脳細胞の活動時に生まれるタンパク質ですが、ウィーナー氏は「我々はその機能が何かを、まだ確定できていない」として、研究の途上であることを述べています。

β類澱粉タンパクは蓄積され、老人班になります。現在の医学界では、認知症の成因は、これら「老人班による脳細胞の壊死である」と考えられています。

β類アミロイドによる細胞外への付着物、いわゆる「老人性プラーク」は認知障害が現れる15~20年前から次第に形成されますので、認知症を調べる上で最も早い指標の一つになっています。

ただ、この研究では、参加者が自分の睡眠時間を報告するだけであるため、睡眠の質もふくめて評価したものではありません。

台中市にある林新医院脳神経内科の林志豪氏は、「睡眠が脳に与える影響は、時間の長短だけではなく、睡眠の質が良いかどうかによっても異なる」と指摘します。

睡眠の質が良い場合には、熟睡している間に脳内のリンパ管が開き、アミロイドβの蓄積を減少させます。その結果として、さらに深い睡眠が得られることになります。

その反対に、不眠、眠りが浅い、夜中に何度も目が覚めるなど、睡眠の質が良くない場合は、脳内のβ類澱粉タンパクが十分に取り除かれないため、一日おきに、目が覚める日と、睡魔でぼんやりする日が交互に訪れます。

それによって、反応が鈍くなり、長期的には脳の退化を引き起こすと言えます。
もしもあなたが今、睡眠障害のある人でならば、早めに医師の診察を受けるようにしてください。適切な睡眠習慣によって、20年後の認知症を予防することができます。

(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)