医聖・李時珍の伝説(1)

棺を開けて人を救い、生き返らせる

明代の偉大な医学者である李時珍は、薬物学の大著『本草綱目』で世界的に有名であり、「薬聖」「医聖」として尊敬され、神医扁鵲華佗張仲景と共に中国古代四大名医と呼ばれています。彼の医療技術も並外れており、中でも「棺を開けて人を救う」「生者の死を断ずる」という話が広く流布しています。

棺を開けて人を救い、生き返らせる

古代中国では、葬式で亡くなった人を棺桶に入れた後は、無礼であり不吉だと見なされるため、政府が剖検を命じない限り、一般的にそれを再び開くことは容易ではありません。しかし、李時珍はあえて葬列を止め、「死者」を命を救ったことがありました。

ある日、李時珍が湖口にやってきたとき、たまたま葬式で棺桶を運んでいる人々に出会いました。これは珍しいことではありませんでしたが、彼は棺桶から血が滴っていることに鋭く気付きました。彼は急いで近くに行き注意深く観察したところ、流れ出る血が淤血ではなく鮮血であることがわかったので大変驚き、自分の安全も気にせず、「早く止めてください! 棺内の人はまだ救えます!」と言い、急いで葬列の群衆を止めました。しかし皆呆れ顔で、誰も真に受ける人はいませんでした。棺を開くことは遊び事ではありません。李時珍も皆の心情は理解していましたが、人を救うため何度も説得し、ついに喪主が棺桶を開くことに同意しました。

棺桶の中に横たわっているのは難産で亡くなった妊婦でした。李時珍はまずは一通りマッサージをし、心臓の近くに針を刺しました。しばらくすると、棺桶の中の女性がそっとうめき声を上げ目を覚ましました。人々は大変驚き歓声を上げました。その後すぐに、女性は無事に男児を産みました。李時珍が針一本で二人の命を救い、死者を生き返らせた医療技術はすぐに広まりました。それ以来、彼は華佗と同じく民間神医としてとても尊敬されるようになりました。

生者の死を断ずる

「生者の死を断ずる」とは、生きている人を診断し、いつ死ぬかを予測することです。この能力について聞いたことがある人もいるかもしれません。神医の扁鵲と華佗にもできたことです。 しかしそのほとんどは患者の治療中に診断するもので、李時珍は突然、病気もなく生き生きとした人に6時間しか生き残れないと告げたのです。何が起きたのでしょうか?

李時珍が母子二人を救ってから、神医に会ってみようと、彼のもとに病気でない人々まで大勢集まってくるようになりました。ある日、薬屋の息子もご多分に漏れず、食事をしていたところ死人を生き返らせた李時珍が患者を診ていると聞き、好奇心に満ち、走って見に行きました。見物人の群衆をひたすらかきわけ、ついに李時珍の前まで到達した彼は「先生、私に病気があると思いますか?」と尋ねました。そこにいたほとんどの人は彼に病気があるとは見えず、本人も身体上苦痛がありませんでした。、

しかし李時珍は目を上げてじっと見つめ、彼の気色が良くないと見ました。そして急いで診脈をした後、ため息をつき、こう言いました。

「まだ若くて残念だが、6時間しか生きられない。家族があなたを探さないように、早く家に帰ってください」

それを聞いて皆は驚きました。この若い男は元気にしているのに、なぜ死ぬというのだろう?

皆は困惑し、李時珍が騒動を起こした彼を怖がらせていると思っただけでした。その薬局の息子も怒って罵声をあげ、みんなに宥められて、ようやく怒りながら立ち去りました。

しかし彼が家に帰ってから本当に6時間も経たないうちに死んでしまいました。人々はふと我に返って死因を尋ねたところ、彼は食事後満腹状態で走り回ったため、内臓を損傷し、治療が不可能になったことが判明しました。それ以来、人々は李時珍の不思議な医療技術を賞賛するようになりました。

(翻訳・瑠璃)