「どうも疲れがとれない」漢方医学があなたを元気にします

ここでは漢方医学でいう気虚(ききょ)、血虚(けっきょ)、陰虚(いんきょ)、陽虚(ようきょ)など、4種の「すぐれない体質」に焦点を当て、その養生方法を紹介します。

気虚は、気(エネルギーの一種)が不足し元気がない状態。
血虚は、血が不足して循環が悪い状態。
陰虚は、冷やす力が不足し、ほてりやすくなった状態。
陽虚は、虚寒(きょかん)とも言い、陽が不足して寒気が出る状態のことを指しています。

気虚体質の保健法

気虚体質とは、人間の気が不足しているため、体力も気力も乏しく、少しの活動で疲労感を感じる体質です。

このような場合、体の免疫力も総じて低下しています。特徴としては、常に無気力で、声が低い、疲労感や脱力感を覚え、よく汗をかきます。また、特に体の動きが鈍く、白い舌苔(ぜったい)がついていることが多いものです。一般的な健康管理は以下の通りです。

1、食事による保健
基本的な補気(ほき)の食物は、以下の通りです。
粟、うるち米、もち米、エン麦、インゲン豆、菜花(ナバナ)、ニンジン、シイタケ、豆腐、ジャガイモ、サツマイモ、牛肉、ウサギ肉、豚の胃袋、鶏肉、鶏卵、鰱魚(レンギョ)、サメ、フウセイ(ニベ科の魚)、ヒラメなど。

これらの食材は全て、脾臓を健康にして気を養うのに、非常に良い作用があります。

2、生薬による保健
常用の補気薬物には、チョウセンニンジン、黄耆(キバナオウギ)、セイヨウニンジン、太子参(タイシジン)、党参(トウジン)、茯苓(ブクリョウ)、白術(ビャクジュツ)、ヤマイモ、炙甘草(シャカンゾウ)、霊芝(レイシ)、五味子(ゴミシ)、大棗(ナツメ)などを選択することができます。
補気効果のある漢方製剤も適宜服用することができますが、高血圧の患者は、チョウセンニンジン、セイヨウニンジン、五味子は避けます。
 

3、運動による保健
ご自身の体力に応じて、いくつかの伝統的なトレーニング方法を選択できます。例えば、太極拳、太極剣、健康気功などです。気功は腎臓の気を固め、筋骨を健康にすることができます。

虚血体質の保健法

虚血は、血液不足または血流の減少が原因です。虚血になると、顔色がわるくなり、視力が減退するほか、四肢の麻痺、皮膚の乾燥などが現れます。

漢方でいう虚血は、西洋医学でいう貧血と完全に同一ではありません。虚血体質の人は、臨床では常に顔色が青く、口唇も白いうえ、めまい、舌の色が淡白、脈が弱いなどの症状が見られます。女性の月経量が少なくなり、月経の遅れや閉経などの症状につながることもあります。
 

1、食事による保健
補血によく用いられる食物は、黒米、ゴマ、蓮の実、リュウガン、ライチ、桑の実、ハチミツ、ホウレンソウ、金針菜(きんしんさい)、クロキクラゲ、アスパラガス、トマト、牛乳、烏骨鶏、羊肉、豚足、豚の血、ロバの肉、ウズラの卵、スッポン、ナマコなどです。自分に合った薬膳を選んで療養することもできます。
 

2、生薬による保健
補血効果をもつ漢方薬は多く、常用の補血漢方薬は当帰(トウキ)、阿膠(アキョウ)、ツルドクダミ、クコ、白芍(シャクヤク)、熟地黄(アカヤジオウ)、紫河車(胎盤)などを選択できます。

3、生活を規則正しくする
普段の生活は規則正しく、適度に運動をしてください。血の気の少ない人は、気持ちが振るわず、不眠や物忘れ、集中力がない状態がよくあります。そのため、心を養い、精神を奮い立たせるよう努めてください。

陰虚体質の保健法

陰虚体質とは、常に虚火がある体質のことであり、精、血、津液(体内にある正常な状態の体液)などの物質が不足しているために起きます。陰虚は、陽熱が相対的に高くなっている状態です。

体は虚性による興奮状態になり、人の適応能力を弱めるとともに、体は老衰しやすくなっています。

1、食事による保健
陰虚体質の食事は、滋陰(じいん)つまり「冷やす力である陰を補充すること」が求められます。

よく選択される食物は、もち米、緑豆、豆腐、さとうきび、桃、シロキクラゲ、野菜、果物、イカ、亀、スッポン、ナマコ、アワビ、カニ、牛乳、牡蠣(カキ)、アサリ、クラゲ、鴨肉、豚皮などです。これらの食品は、体の陰精を補う効果があります。

2、生薬による保健
陰を補う薬物としては、麦門冬(バクモントウ)、天門冬(テンモントウ)、石斛(セッコク)、沙参(シャジン)、玉竹(アマドコロ)、黄精(オオエミ)、クコ、山萸(サンシュユ)、女貞子(ネズミモチ)、旱蓮草(カンレンソウ)、玄参(ゲンジン)、桑椹(ソウジン)、決明子(ケツメイシ)、シロキクラゲ、ローヤルゼリーなどです。体調に合わせて選べます。

3、起居と運動に留意
陰虚の人は、夏の暑さにも冬の寒さにも耐えられません。特に「秋冬養陰」という原則に留意して、これからの冬場は、よく陰を養うよう心がけてください。運動は主に肝腎の功を養生します。例えば太極拳、八段錦などをよく練ると良いでしょう。

陽虚体質の保健法

陽虚とは、体の陽気不足。いわゆる「火力が足らない」という状態です。
陽気不足は、一般的には脾腎(脾臓と腎臓)の陽気虚を主とします。その臨床としては、普段から寒気がして、手足は温かくなく、口の味覚が減退します。熱い飲食を好み、生のものや冷たい飲食をすると腹痛や下痢になりやすい状態です。

あるいは胃部および腰や膝の冷痛、小便は澄み、大便は軟らかいなどがよく現れます。

1、食事による保健 
陽気虚弱には、温腎壮陽の食事をとることが適切です。陽気を補う食材には、羊肉、豚の胃袋、鶏肉、太刀魚、犬の肉、雀の肉、鹿の肉、タウナギ、エビ類、刀豆(ナタマメ)、クルミ、栗、ニラ、ウイキョウ(茴香)などがあります。
これらの食品は五臓を補い、骨の髄を補い、体質を強壮にします。陽虚体質の場合は、真夏でも冷たいものは食べないようにしましょう。
 

2、生薬による保健
補陽の漢方薬は多くあります。常用する漢方薬としては、鹿茸(ロクジョウ)、海狗腎(オットセイの腎臓)、冬虫夏草(トウチュウカソウ)、肉蓯蓉(ニクジュウヨウ)、補骨脂(ホコツシ)、杜仲(トチュウ)、菟絲子(トシシ)、沙苑子(サエンシ)、懐牛膝(カイゴシツ)、オニバスの実、覆盆子(フクボンシ)、仙茅(センボウ)、仙霊脾(センレイヒ)、丁香(チョウジ)などがあります。
 

3、起居とトレーニング
陽虚の体は、寒暑の変化に対し、適応する能力があまり良くないですが、これからの厳冬期には、何らかの方法で寒を避ければすぐに体は暖かくなります。

また「春夏は陽を養う」の原則に則り、とくに春と夏の季節には自然界の陽気の助けを借りて自身の陽気を補うため、澄んだ空気浴や日光浴などを続けることも良いでしょう。

運動には、ご自身の体力に合わせて、ウォーキング、ジョギング、太極拳、五禽戯(ごきんぎ)、八段錦、そのほか各種の球技などを選んでください。
 

(翻訳編集・鳥飼聡)