なかなか治らない咳が続いた経験はありませんか。日を追うごとに息苦しさが増し、救急外来に行くことさえ不安になるような状態です。そこに至る前に、見過ごされがちな自然な介入によって回復を後押しできる可能性があります。それが、毎日の日光浴です。
内科、呼吸器疾患、集中治療医学、睡眠医学の4分野で認定を受けた医師、ロジャー・セヘルト博士は、日光が持つ治癒力を臨床の現場で目の当たりにしてきました。
パンデミックの最中、セヘルト博士は医療機器の補助なしでは呼吸ができない重症のCOVID-19患者を診ていました。日光療法を取り入れた後、数日で患者たちは自力で呼吸できる兆しを見せ始めました。
「挿管直前だった患者を、わずか5日で完全に酸素から離脱させることができました。私がこれまで見てきた中で、最も早い酸素離脱でした」と、セヘルト博士は「Vital Signs」のブレンドン・ファロン氏に語っています。

セヘルト博士の経験は、急性期の症例にとどまりません。あるコロナ後遺症の患者は、1年以上にわたり重い息切れ(10段階評価で8)に苦しんでいました。複数の治療や検査を受けても改善は見られませんでした。そこで博士が勧めたのは、非常にシンプルなことでした。毎日20~30分、屋外に出ることです。
3週間後、その結果は大きな変化として現れました。息切れは10段階で3まで軽減し、ほとんど気にならない状態になったのです。このような変化を目の当たりにして以来、セヘルト博士は多くの患者に日光浴を勧めるようになりました。
日焼けや皮膚がんへの不安から、屋内で過ごす時間が長くなっている人は少なくありません。しかし日光を避け続けることで、本来得られるかもしれない健康への恩恵を逃している可能性もあります。
「多くの研究で、屋外に出て日光に触れる機会が多い人ほど、結果的に長生きする傾向が示されています」と、セヘルト博士は述べています。
イギリスとスウェーデンで行われた研究では、日光浴が心血管疾患やがんに関連する死亡を含め、全体的な死亡率の低下と関連していることが報告されています。
欠けていたピース:ビタミンDだけではない
日光浴の効果は、しばしばビタミンDと結びつけて語られます。しかしセヘルト博士は、患者にビタミンDサプリメントを与えても、期待したような変化が見られないケースがあることに気づきました。そこで、日光が別の仕組みで健康に影響している可能性を探り始めました。
「ビタミンDは、実は体内で起きている別の重要な変化の『指標』にすぎないのではないか、と考えるようになりました」と博士は言います。「日光には、ビタミンDとは無関係な何かがあり、まったく異なる形で体に良い影響を与えているのかもしれません。それは調べる価値があると感じました」
調査を進める中で、セヘルト博士は、日光浴がより深い細胞レベルで体に影響している可能性に注目するようになりました。
日光が細胞に働きかける仕組み
太陽光には複数の波長が含まれており、それぞれが体に異なる作用を持っています。赤外線は、日光の「温かさ」として感じられる光で、体の組織の奥深くまで届き、細胞機能に関与すると考えられています。「赤外線は、細胞のエネルギー産生を担うミトコンドリアが円滑に働くうえで重要です」と博士は説明します。
セヘルト博士によれば、ミトコンドリアが良好に機能すると、体内でより多くのメラトニンが産生され、このメラトニンが抗酸化物質として働くとされています。抗酸化物質は酸化ストレスに対抗し、ミトコンドリアの損傷を抑えることで、さまざまな不調のリスクを下げる可能性があります。「心疾患、糖尿病、肥満、認知症、がん、ロングCOVIDなど、これらの多くの背景にはミトコンドリアの酸化ストレスが関係していると考えられています」
メラトニンは、酸化ストレスに直接働きかけるだけでなく、体内に存在する他の抗酸化物質の働きも調整します。「最大限の抗酸化作用を期待するなら、ベリー類を食べるのも一つですが、体内で産生されるメラトニンが重要な役割を担っていると考えています」
サプリメントで代用できるのか?
多くの人が経口のメラトニンサプリメントを利用していますが、日光による作用をそのまま再現できるわけではありません。
セヘルト博士はまず、経口メラトニンは主に体に「睡眠の時間」を知らせるシグナルとして働くと説明します。「そのため、経口メラトニンを摂取する場合は、基本的に就寝直前が想定されています」
さらに、夜間に分泌されるメラトニンの量は、ミトコンドリアで産生される量と比べるとごくわずかです。そのため、体内で多くのメラトニン産生を促すには日光浴が重要になる可能性があると博士は述べています。「経口メラトニンの量では、この刺激を完全に代替することは難しいでしょう」

日光:自然が持つ抗菌的な側面
赤外線に加えて、紫外線にも独自の性質があります。紫外線はビタミンDの生成を促すだけでなく、病原体に作用する可能性があることが、1世紀以上前から知られてきました。
抗生物質が登場する以前、結核のような細菌性肺感染症は命に関わる病でした。しかし、スイスやオーストリアにあった結核療養所では、紫外線を活用した治療が行われていました。患者は高地に移され、回復が早まるケースもあったと報告されています。
セヘルト博士によると、高地には2つの特徴があります。結核菌が生存しにくい酸素環境であること、そして紫外線への曝露が強まることです。赤外線は大気や衣服を通過しやすい一方、紫外線はそうではありません。大気が薄い高地では紫外線の影響が強まり、その作用がより発揮されやすくなります。こうした高地療養所では、当時としては注目すべき成果が記録されました。
賢い日光浴の取り入れ方
紫外線による皮膚ダメージや皮膚がんのリスクを心配する人は多いでしょう。しかしセヘルト博士は、多くの研究が紫外線のみを単独で調べており、自然な日光に含まれる赤外線との組み合わせを十分に検討していない点を指摘します。
「近赤外線が紫外線と同時に存在すると、紫外線による影響を和らげる要素があることが示されています」と博士は言います。「この2つの光が自然な形で組み合わさることで、体にとってより好ましい影響が得られるのではないかと考えています」
それでも、特に日光に慣れていない人にとって、過度な日光曝露には注意が必要です。赤外線を伴わない純粋なUVタンニングベッドや、UV指数が極めて高い時間帯の外出は、リスクが高まる可能性があります。
自然な太陽光のバランスを得るために、セヘルト博士は日の出や日没前後など、特定の時間帯の日光浴を勧めています。
「これらの時間帯は、紫外線に対して相対的に赤外線を多く受け取ることができます。日光に慣れていない人が少しずつ外に出て、肌が順応していくのに適した時間です」と博士は述べています。
セヘルト博士によれば、日光に当たる時間は長時間である必要はありません。1日15分程度の赤外線曝露で、コロナ患者に良好な傾向が見られた研究もあります。「意識的に外に出て、今よりも毎日20~30分ほど多く日光を浴びるだけでも、ここで触れてきたような健康への影響に寄与する可能性があると考えています」
(翻訳編集 日比野真吾)
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