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新研究:中年期以降も「基礎代謝率は落ちない」

長い間、人の新陳代謝は成人期以降、加齢とともに次第に弱まるものと考えられてきました。

そのため、新陳代謝の速度の緩和により、体重も年齢とともに増加すると考えられてきたわけです。ところが、人間のエネルギー消費を対象とする最新の研究成果は、こうした従来の認識を覆す可能性があるといいます。

明らかになった「代謝の4つの段階」

米ノースカロライナ州にあるデューク大学の研究者が主導したこの新しい研究は、大規模な国際協力、データ共有の結果によるものです。

個別の小規模な研究から得られた「二重標識水」の代謝データを、世界中の数十人の科学者が広く共有することで、人の生涯における代謝に関する広範な調査が初めて行われました。その結果、若い頃だけでなく、中年期を通しても、新陳代謝は旺盛なままであることが示されたのです。

この研究結果は、「生命代謝における4つの異なる段階を発見した」と言います。

その「代謝の4つの段階」とは、以下の通りです。

1、 出生から1歳まで
この時期の乳幼児のカロリー消費のペースは、母親と同程度から始まり、やがて成人に比べ50%も高くなり新陳代謝率は「生涯のピーク」を迎える。

2、 その後20歳ぐらいまで
高かった新陳代謝率がやや鈍り、毎年3%ぐらいの割合で次第に減ってくる。

3、 20歳から60歳にかけて
新陳代謝率は、成人期を通じて「安定した状態」を保つ

4、60歳以降
毎年約0.7%低下する。90歳までの新陳代謝中年期より26%低下する。
 

「人類の認識を変える発見」になるか

新陳代謝は、生物が生命を維持するため、体内で必ずおこなわれる一連の化学過程のことです。この研究プロジェクトに参加している全ての研究センターが「黄金基準」とも位置づけているのが、いわゆる「二重標識水」による新陳代謝率の測定方法です。

これは1980年代に出た、エネルギー消費率の測定技術です。
簡単に言うと、検査対象者に「水を飲んでもらう手続き」と「定期的に採尿をしてもらう手続き」を確実に実行してもらうことにより、日常生活における総エネルギー消費量を正確に測定する方法です。

ただし、この「二重標識水」による測定には高度な技術と、その高度な技術を駆使できる専門技術者が各国の研究チームに確実に存在するという2つの条件を必要とします。測定にかかる費用も高額であるため、これまでは限定的な範囲での研究に制限されてきました。

そこで今回、研究者たちは29カ国で協力して6600人以上のデータを集めるという大規模な調査を実施しました。調査対象者の年齢は、生後8日の赤ちゃんから95歳の高齢者までで、ほぼすべての年齢層をカバーしています。

研究者は、この調査結果は従来の代謝に対する理解を覆すとともに、「乳幼児期から高齢期に至るまでのエネルギー需要および栄養摂取に関する全ての計画について、人類は再検討することになるかもしれない」という可能性を示唆しました。
 

中年期肥満の原因は「代謝率の低下ではない?」

研究に参加した英アバディーン大学のジョン・スピークマン教授は「これまでに見たことのない調査結果であり、驚くべきことがたくさんあります」と話します。

「私にとって一番驚いたのは、成年になってから、中年期もずっと代謝が変わらないことです。したがって、中年期から体重が増えたり、腰回りが太ったりする原因は、若い頃に比べて基礎代謝率が低下しているからだとは、必ずしも言えなくなったのです」

研究者はまた、人生の初期である乳幼児期に現れた新陳代謝のピークについて、人間の発育過程におけるその時期の重要性と、子供時代の栄養不良がなぜ生涯にマイナスの結果をもたらすのかについても明らかにしています。

同研究のもう一人の中心人物であるデューク大学のヘルマン・ポンザー教授は、驚くべきこととして「赤ちゃんの新陳代謝」を挙げています。新陳代謝は1歳のときに非常に活発になり、加齢とともに体の細胞は次第にその働きを止めていきます。

ポンザー教授は、代謝率の変化を十分に理解することは、医学に影響を与える可能性があると述べています。それは例えば、がん代謝の変化に伴って異なる広がりを見せるかどうか、投与する抗がん剤の量を異なる段階で調整できるか、などを明らかにするのに役立つかもしれないと言います。

この新しい研究は前代未聞であり、「人類の新陳代謝に対する重要な新発見になった」と、ウィスコンシン大学のロザリン・アンダーソン氏とティモシー・ローズ博士も述べています。

ポンザー教授は、これらは全て私たちがこれまで十分に認識していなかった結果だとして、「こうした問題を解明するには、本当にこのようなビッグデータが必要なのです」と締めくくりました。

(翻訳編集・鳥飼聡)