ギリシャ神話より:人類の起源(下)破滅から逃れる道

吟遊詩人へーシオドスの『仕事と日』に、こんな話があります。

神が創造した人間は、その生み出された順番により「5つの種族」に分けられます。
いろいろな金属名を冠して名付けられたその種族は、「黄金の種族」「白銀の種族」「黄銅の種族」「英雄(半神)の種族」「鉄の種族」です。

この5つの種族には、それぞれ特色があります。
「黄金の種族」の人は、たとえ自身が死に臨んでも、まるで神であるように、何も心配することがないように泰然としています。

その土地では、憂いや苦労もなく、穀物は自然に畑から芽吹いて実るのです。彼らは多くの家畜を所有しており、神の歓心を得ています。彼らは死んで土に帰ると精霊になります。これらの精霊は人類の守護者なのです。

「白銀の種族」は、黄金の種族よりもかなり劣ります。彼らは知恵が足りず、お互いを傷つけ合い、死んでも魂は永遠に生きられないのです。

次の民族は「黄銅の種族」です。彼らは、かなり強く、恐ろしい人々です。暴力と戦闘を好むあまり、ついに自分の手に負えなくなってしまいました。

「英雄(半神)の種族」は、偉大な民族とされる人々です。多くの大冒険に参加し、また多くの名誉ある戦いをしたので後世の人々に称賛されました。彼らは皆、死んでから「福の島」に行って、幸せに暮らしています。

そして5番目は「鉄の種族」。これが今、地球上に住んでいる人類です。彼らは不吉な時代に生きており、本性もかなり悪になってしまったため、いつも苦労と悲しみから逃れられないのです。

「鉄の種族」の末裔である現代の人々は、世代を重ねて、ますます悪くなっています。次の世代は、永遠に上の世代に及ばないのです。彼らは、権力を崇拝すればするほど堕落してしまい、その結果、善人を尊重しなくなってしまいました。

人々が正義感を失って、他人の悪行に腹も立たなくなった。優しさを失って、苦しんでいる人に同情しなくなった。人類がそのように自分勝手になった時、ギリシャ神話の主神ゼウスは彼らを破滅させるとされています。

しかし、そうなる前に民衆が立ち上がって、彼らを抑圧する「暗愚な暴君」を倒せば、まだ希望があるかもしれません。

(翻訳編集・鳥飼聡)