免疫力を高める ケルセチンの効果

多くの人が、細菌、ウイルス、真菌など様々な脅威に直面する中で、多くの人が免疫力を高める方法を探しています。例えば、よく食べる、十分な睡眠をとる、環境有害物質をさける、十分な水分補給をする、ストレスをコントロールする、などです。また、ある種のハーブが免疫力を高めるのに有効であることを発見した人もいます。

免疫のしくみ

体の免疫システムは、抗体、白血球、骨髄、リンパ節、血管、胸腺、補体系(抗体を補充する様々なタンパク質で構成)、脾臓など多くの部分から構成されています。免疫系の働きは、細菌、真菌、ウイルス、身体的外傷、ストレス、環境および食品毒素から身体を守るためにとても重要です。

免疫系は、体にとって異物や好ましくないものと判断した場合に活性化されます。これらの物質は総称して抗原と呼ばれ、免疫細胞の受容体とくっつくと、風邪やインフルエンザ、炎症、細胞の突然変異など、さまざまな反応を引き起こします。

免疫システムには、自然免疫と呼ばれるものと獲得免疫と呼ばれる2つのシステムがあります。この2つのシステムは、侵入してきた異物に対抗するために連携していますが、同じように働くわけではありません。

自然免疫系は、体内に異物が侵入したときに1番に反応して異物を排除します。また、抗体を作るために、体内に侵入した異物の情報を、獲得免疫で働く免疫細胞に伝える役割も担っています。

一方、獲得免疫は、体内に侵入した異物に対する抗体を作り、次に同じ異物が侵入した場合に効率的に排除する仕組みを作る免疫です。例えば、麻疹から回復した人は、獲得免疫システムが麻疹ウイルスに再び遭遇したときにそれを認識し、打ち負かすことができるのです。

理想的には、身体はすべての危険因子を避けたいものですが、現実はそうもいきません。そこで、人々はさまざまなハーブや栄養剤の使用など、免疫システムを強化する方法を模索します。その一つが、最近非常に人気のある、ケルセチンなのです。

ベリー類、柑橘類、黒ブドウなどの果物にはケルセチンが豊富に含まれています。(Shutterstock)

ケルセチンとは?

ケルセチンは色素の一種で、フラボノイドと呼ばれる植物化合物の一つであり、果物や野菜、穀物などに多く含まれます。現在この成分を配合したサプリメントが発売されています。ケルセチンには抗酸化作用があり、また、多くの病気の根本的な原因である炎症を抑える働きがあることも、いくつかの研究でわかっています。

ケルセチンの特徴とは?

免疫力を高めるため、あるいは抗炎症の目的でケルセチンのサプリメントを摂取する人もいますが、もちろんこれは体に多くのメリットをもたらします。具体的には、ケルセチンには次のような作用があります。

抗炎症作用

フリーラジカルが大量に発生すると、健康に悪影響を及ぼす可能性があり、その代表的なものが炎症です。ケルセチンの摂取が炎症に有効であると研究により明らかにされています。

2016年に「Journal of American College of Nutrition」に掲載された研究では、関節リウマチの女性がケルセチン500mgを摂取したところ、関節痛、こわばり、運動後の痛みが改善されたことがわかりました。

免疫力を高める

ケルセチンは、体内の感染症リスクを軽減する働きもあります。2003年に「Bioce」誌で発表された研究では、ケルセチンが「基礎免疫細胞の機能を直接調節する効果がある」と述べられています。

フラボノイドは、キナーゼやホスファターゼなどのさまざまなタンパク質を介してこれを実現すると考えられています。これらのタンパク質は、細胞が最適な状態を維持するために必要なものです。したがって、フラボノイドは健康全般に重要な影響を与えるのです。

ヒスタミン阻害

風邪やインフルエンザでなくても、鼻づまりやくしゃみ、鼻水、喉のかゆみなどを経験する人は少なくないと思いますが、2016年に「Molecules」誌で発表された研究では、ケルセチンがヒスタミンを抑制し、炎症を刺激するさまざまな酵素を阻害することが明らかになりました。ただし、この研究はあくまで動物で行われたものであり、人間での効果を見るにはさらなる研究が必要です。

ケルセチンはどこから摂取できるのか?

ピーマン、黄ピーマン、タマネギ、ネギ、アスパラガス、サクランボ、トマト、赤リンゴ、紫ブドウ、コラード菜、紫キャベツ、ベリー類、緑茶、紅茶にはすべてケルセチンが含まれています。これらの果物や野菜は、皮に最も多くのフラボノイドを含んでいます。

また、ケルセチンのサプリメントは、カプセルや粉末で、単独または他の栄養素との組み合わせで市販されています。ケルセチンの吸収が悪い人もいるので、ブロメラインやビタミンCと一緒に摂ると吸収が良くなります。ケルセチンの1日の平均摂取量は、250~1000mg程度です。

結論

免疫系の健康を守ることは、誰にとっても大切なことです。免疫系の健康を向上させる方法は数多くありますが、健康的な食事と生活習慣を守ることは最も重要なことの一つです。さらに、ケルセチン、プロバイオティクス、ビタミンD、薬用キノコ類、一部の栄養酵素などのサプリメントを摂取することも有効な手段です。

(翻訳・志水慧美)