「高血圧を7日で改善する」菜食という選択肢

高血圧は、日常の自覚症状がほとんどなくても、心筋梗塞脳卒中糖尿病腎臓病などを発症するリスクを高めます。

増加する高血圧患者

高血圧は「高塩分、高油脂、高カロリー」の食事と関係があると言われています。そこで高血圧を改善するためには、その原因となる食生活を改めることが肝要です。

世界保健機関の統計によると、世界には10億人以上の高血圧者がいるとされ、男性の1/4以上、女性の1/5に高血圧の傾向が見られます。

また、高血圧の罹患率はますます高くなっており、過去30年間で高血圧を有する30~79歳の人は6億5000万人から12億8000万人に増加しています。
 

「低脂肪、菜食」で高血圧を改善

一般的な食事療法としては、ナトリウム(塩分)摂取量 を減らし、マグネシウム、カルシウム、カリウムを多く含む食事を摂るとともに、食物繊維、不飽和脂肪酸、良質なタンパク質を積極的に摂ることが提唱されています。

さらに、脂肪由来の飽和脂肪酸およびコレステロールの摂取量を減らし、糖分の制限、赤い肉(牛、羊、豚などの獣肉)および飲酒を減らすことも求められます。

しかし、2014年に国際的な専門誌『Nutrition(栄養)』 に掲載された研究によると、ある種の食事療法によって、「7日間で、良好な高血圧改善効果が見られた」と言います。

米国の著名な食事療法師であるジョン・マクドゥーガル医師は、3高(高血圧、高血糖、高脂質)の患者1600人を対象に、7日間にわたり「低脂肪、完全菜食」による食事改善を実施しました。

その結果、全ての患者の収縮期血圧が平均8 mmHg低下、同じく拡張期血圧も4 mmHg低下し、コレステロール値と血糖値も明らかに改善されたと言います。

その間の食事は「低ナトリウム(1日当たり塩分2 g)、低脂肪、豊富な食物繊維、十分な炭水化物」を特徴とするもので、被験者は空腹を感じることなく、体重が平均1.4 kg減りました。
 

「3高」の患者に、「低脂肪、完全菜食」の食事療法を行った結果、7日間で血圧を下げる効果が現れました。(Shutterstock)

この実験に参加した被験者は、もともと菜食の習慣がない人でしたが、7日間の「低脂肪、完全菜食」を実施するだけで、血圧の面ではかなり改善されていました。

ベジタリアンの食事

台湾では、人口の約1割がベジタリアン(菜食者)であるとされています。

英オックスフォード大学神経学博士で、三軍総医院の陳惟華医師は、「低脂肪については特に強調しなくても、過去の研究から、ベジタリアンの高血圧発生率は低いことが分かっています」と指摘します。

ベジタリアンが口にする植物性の食材には、カリウム、マグネシウム、食物繊維、フィチン、不飽和脂肪酸が多く含まれており、いずれも心臓血管には有益な栄養素です。

カリウムは、ナトリウムを排出する働きがあり、血圧のコントロールに役立ちます。マグネシウムは血管壁の弾力性を維持し、アテローム性動脈硬化のリスクを低下させます。

ベジタリアンの腸内細菌には保護作用があり、動脈硬化の原因になる酸化トリメチルアミンをほとんど製造しません。

食物繊維は、腸内細菌叢を改善するとともに、コレステロールを吸着して体外に排出します。フィチンは、抗炎症作用を発揮して血管を保護し、血管の硬化を予防するとともに、血液循環を順調にします。

不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪と多価不飽和脂肪に分けられ、どちらも腸内の悪玉コレステロールのレベルを下げるのに役立ちます。

 

ベジタリアンの腸内細菌には保護作用があり、動脈硬化の原因になる酸化トリメチルアミンをほとんど製造しません。(Shutterstock)

ダッシュダイエットという選択肢

陳惟華医師は、「完全なベジタリアン食を続けられなくても、ダッシュダイエットから始めることができます」とアドバイスします。

ダッシュダイエット(DASH diet)とは、主に高血圧を改善するために米国で考案された食事療法で、果物、野菜、全粒穀物、無脂肪または低脂肪の乳製品、魚、家禽、豆類、ナッツ類、および植物油を充分に摂取します。

陳医師は、食事療法中のタンパク質源として豆製品、魚肉、鶏卵、白い肉(鶏肉)を薦める一方、「赤い肉(獣肉)は、できるだけ食べないほうが良いでしょう」と述べています。

(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)