肥満と良質でない脂肪の多い食事は、脱毛を招きます。(Shutterstock)

「脱毛の原因は肥満と高脂食」その予防策は何か?

脱毛は、加齢と関係があると長い間考えられてきました。確かに年を取るほど、抜け毛は多くなります。

肥満」が招く脱毛

しかし、脱毛の原因は加齢だけではありません。遺伝的因子や他の病気、さらには慢性的ストレスによっても脱毛が生じる場合があります。

最近の研究によると「脱毛と肥満との関係」。より正確に言うならば、肥満の要因となる「好ましくない脂肪」の大量摂取が脱毛に深く関係するとして、注意が呼びかけられています。

米国を例にすると、人口の50%近くが該当する肥満は、貧富の差や人種、性別を問わない社会問題となっています。

私たちは誰でも「肥満は健康的でない」という見方に同意します。

実際、肥満は心臓病、脳卒中、糖尿病、高血圧など、多くの重篤な病気と関連しているのです。したがって、健康に対する肥満の影響は、非常に深刻なものと言えるでしょう。

しかし、肥満の影響は他にもあります。その影響の一つである「脱毛」は、それほど恐ろしいものでも致命的でもないのですが、なかなか厄介な症状です。

2021年6月、日本の東京医科歯科大学による、ある研究が学術誌『ネイチャー』に発表されました。そのテーマは「肥満は髪の減少を加速させるか?」です。

研究者たちは実験用マウスを使って、遺伝的に誘導された肥満や高脂肪の食事が、体毛の成長、再生、脱毛にどのような影響を与えるかを分析しました。その結果、高脂肪食を与えられたマウスは、毛がまばらになることが分かったのです。高脂肪食が毛包の幹細胞を損ねたからです。

 

原因の一つは「炎症」

研究によると、マウスに薄毛や抜け毛が見られた原因は「炎症」だったと言います。

高脂肪食を与えられたマウスの毛包幹細胞に、炎症の増加を示す遺伝子が出現しました。具体的に言うと、この遺伝子は毛包幹細胞における炎症性サイトカインのシグナル伝達を活性化するものです。この「炎症シグナル」は、毛包幹細胞内の毛包再生に明らかに影響します。

既存の研究では、実験用マウスの一方のグループには高脂肪食を与え、もう一方のグループには低脂肪の飼料を与えました。

高脂肪を摂取したマウスには、皮膚表面の変化、脱毛。毛包の減少が現れました。毛包幹細胞も少なくなり、その結果、当該のマウスはより速いサイクルで脱毛するようになったのです。

 

「脂肪」の良し悪しを見分ける

では人間の場合、現在の食事をどのように変えれば、抜け毛のリスクを軽減できるでしょうか。

基本的なことですが、良質な脂肪、タンパク質、炭水化物をバランスよく含む食事を実践することは、「好ましくない脂肪」つまり加工肉製品などの過剰摂取による慢性炎症、およびそれがもたらす脱毛のリスクを軽減することは間違いありません。

これは同時に、果物野菜、豆類、全粒穀物、赤身肉など、とくに地元で生産された有機食品を多く食べることを意味します。

摂取する脂肪は、エキストラバージンのオリーブ油、アボカド油、ココナッツ油、有機栽培のクルミやアーモンドなど、より良質で健康的なものを選びます。

そのほか、ゴマやチアシード、カボチャの種なども忘れずに食べましょう。もちろん、すべては適量を守るようにします。

 

「危うい命」を救う食事

私のこの記事の中心は「脱毛を防ぐ食事」です。

しかし、生活のなかのストレスを軽減することも大切です。言い換えれば、健康的な食生活は、日常のストレス解消にも役立つのです。

結論を申しましょう。

脱毛のリスクを減らす方法は「摂取する脂肪の質を高める」ことです。

それは、あなたの髪を救うだけでなく、あなたの生命を救うかもしれないのです。

(翻訳編集・鳥飼聡)

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