私の思い出のキエフ「温もりと風格の街」(1)

その街の名前を、今はウクライナ語で「キーウ」と呼ぶべきかもしれません。
しかし、私がこれから書きたいのは、私の思い出の中に今もある、限りなく美しい街のことですので、ここは昔のまま「キエフ」と呼ばせていただきます。

 

夢の中の街

私が以前、この街で過ごした10年以上の時間は、いま私の中で、何者にも破壊されたくない貴重な宝物になっています。

当時の写真を見ると、どれも全てが思い出せるのです。
キエフ(キーウ)の美しい街並み。よく利用したあの地下鉄。おいしい食べ物。素朴で優しい人々。歴史ある街の風景が目に浮かびます。
アルバムのページをめくれば、記憶は一瞬にして遠い時空に引き戻されるのです。

春のキエフは、チューリップの「海」になります。
夏のキエフは、短い夏季を楽しむ情熱にあふれています。
秋のキエフは、栗の葉が落ち、その樹木の間に夕日が長く差し込みます。
そして冬のキエフは、粉雪が真っ白に飾られ、広場は一面の氷盤となります。

 

冬のキエフ

この国のこの街で、私は10年以上を平穏に過ごしました。
その間に、ウクライナ国内の多くの場所を訪れるとともに、この国の人々と、切っても切れない縁を結んできたのです。

初めてウクライナに着いたときのことです。それは寒さの厳しい冬でした。

飛行機のタラップを降りて地上に立った瞬間、足元から舞い上がった軽やかな粉雪を見ました。そこで私は初めて、ウクライナの冷たくも清冽な風を、胸一杯に吸ったのを覚えています。

厚手のコートの襟を立て、降りてきた大勢の乗客とともに空港のバスに乗り込みました。一面真っ白な雪が、異国からの女子学生である私を迎えてくれました。
 

(次稿に続く)
(翻訳編集・鳥飼聡)

白簡