ソルボンヌ大学。 (Shutterstock)

【芸術秘話】「聖なる森」――教授の姿よりも見たい魅力的な絵画

1886年、画家ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌは、ソルボンヌ大学の円形大講堂の正面の壁に絵を描くという大きな仕事を依頼されました。長い歴史を持つ有名な大学からの依頼なので、栄誉はもちろんありましたが、同時に大きなチャレンジでもありました。なぜなら、大講堂の正面の壁は丸く、長さは25メートルもあるからです。このようなキャンバスに見合う壁画を創作することは、なかなか容易なことではありません。

しかし、シャヴァンヌはすぐに絵筆を取り、「聖なる森」という神話を題材に、大講堂を神秘的で安らかな聖地に変えたのです。弁論や詩歌、哲学、歴史、植物学、地質学、物理、幾何学などの学術分野を人間の姿で表し、男性もいれば、女性もいて、立っている者もいれば、座ったり、くつろいだりする者もいます。そして、中央の姿勢よく座っている女性はソルボンヌ大学を象徴する女神です。人物同士の交流や動きがまるで生きているかのようで、じっと眺めていると、思わず壁画に吸い込まれてしまうような感じがします。

(ソルボンヌ大学の円形大講堂の壁画はこちらから)

多くの人物が描かれていますが、実は、シャヴァンヌはたった1人のモデルしか使いませんでした。つまり、モデルに異なる動作をさせて、シャヴァンヌはそれを見て何人もの人物を描き、より自然に見えるように修正したのです。

大役を任されたこのモデルはシュザンヌ・ヴァラドンでした。当時、彼女はまだ15歳で、すでに何年間か絵画を習い、シャヴァンヌだけでなく、ルノワールやロートレックなどの有名な画家たちのモデルを務めながら、その絵画技術などを学びました。1894年、ヴァラドンは国民美術協会に出展した最初の女性画家として世間に名を広めました。

ソルボンヌ大学の学生はなんて羨ましいことでしょう!授業中、疲れたら、真正面の大きな壁画「聖なる森」を見て頭を休めることができるのですから。また、作品が完成した1世紀後に、壁画の中の多くの人物は実は同じモデル、つまりヴァラドンだったということがようやく明らかになったのです。

(翻訳編集・天野秀)

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