2014年6月、中国海警局船が南シナ海の中国石油採掘施設の近くを航行したベトナムの船に対して放水した。同月ハノイで行われたベトナム沿岸警備局の記者会見で当時の映像が提示された。 (HOANG DINH NAM/AFP/Getty Images)

米国の軍事対応避け現状変更を試みる…中国共産党の「グレーゾーン作戦」

中国共産党はアジアの周辺国に対して外交、経済など非軍事手段で圧力をかけて政権の利益を獲得しようとしている。米シンクタンク・ランド研究所は、こうした「グレーゾーン作戦」を駆使して米国や周辺国からの軍事対応を避け、政権の都合に叶う現状へと変更させていると分析する調査報告を発表した。

研究所が3月30日に公表した概要によれば、中国側は「グレーゾーン作戦」とは言わず治安維持、権利保護、警護などと位置付けている。また、党の核心的利益に関する課題には地政学、経済、軍事、サイバーの4つの主要領域で複合的な作戦を行使しており、ベトナムやフィリピンよりも、日本やインド、台湾のようなより対処力の高い国・地域に対して多種多様な戦術を採用していると分析した。

中国は2020年の全国人民代表大会の常務委員会で人民武装警察法の改正を採決し成立した。海警局を含む武警は中国軍と連携を強め、平時から軍との共同訓練を実施するなどして軍との融合を深めている。

グレーゾーン作戦については日本や台湾、豪州の研究所でも議論が進む。台湾国防部は昨年11月に発表した国防報告書で、中国軍機が台湾の防空識別圏(ADIZ)への進入を常態化させており、領有権の既成事実化を狙うグレーゾーン戦略だと初めて明記した。

日本の防衛研究所中野義久副所長は2020年7月のNIDSコメンタリーで、グレーゾーンの事態におけるフェイクニュースやSNSを使った情報工作を例示した。対象国の「反政府感情、反欧米感情や民族主義 による政治・社会的亀裂を刺激し続け、国内に『継続的に機能する前線』を出現させ、自らに有利な戦略環境を創造することを狙う」と記している。

豪州の専門家は南シナ海や中印国境ヒマラヤ山脈実効支配線(LAC)などにおける衝突を例に、係争地における自国法の強制を指摘する。「しばしば領土侵害を伴うものの、戦争行為には至らないような攻撃的な戦術」だと、豪グリフィス大学グリフィス・アジア研究所客員フェローのピーター・レイトン氏は米インド太平洋司令部のメディアFORUMに述べた。

ランド研究所の報告は、こうしたグレーゾーン戦略に対処するための提言として、主要な米同盟国やパートナー国との間で同戦略をめぐる議論を重ねることや、国務省がより対抗策を講じられるよう同戦略の基準を設けること、米軍のインド太平洋地域の諜報や監視、偵察を強化することなどを挙げている。

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