WHOは共産主義者に乗っ取られたのか? 

2024/04/23
更新: 2024/04/23

1948年に設立された世界保健機関(WHO)は、人々の健康促進に取り組んでいると自称している。新型コロナの対応において、中国共産党の代弁者として振る舞い続けたなどの理由で、WHOの中立性が疑問視されている。

また、WHOの最大の資金源は、世界中の個人や企業から寄せられた寄付金で、7割以上を占めている。民間からの寄付金は、2023年10月21日までに約246億円に上った。

テドロス事務局長は共産主義者

現在のテドロス事務局長は、エチオピア出身で、同国の保健長官と外相を歴任した。また、「エチオピア人民革命主戦線」のメンバーでもある。同戦線は毛沢東の思想に強く影響され、中国共産党もこれを支持していた。2017年にWHO事務局長に就任した当初から、中国共産党が後押しをしたとの指摘があった。その中立性が疑問視されている。

WHOの要職についた中国共産党員

李愛蘭(Li Ainlan)氏、WHO事務局長補(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage)/ヘルシア・ポピュレーションズ(Healthier Populations)担当)

2019年から2023年までWHOカンボジア王国出張事務所の代表を務めた。WHO西太平洋地域事務局で、WHO地域緊急事態部健康緊急事態計画担当部長として勤務し、同事務局健康安全保障・緊急事態部部長を務めた。 WHO入局以前は、北京大学公衆衛生学院准教授だった。

任明輝(Ren Minghui)氏 WHO伝染病担当事務局長補佐

WHOに就職する前、約30年間中国衛生部に勤め、計画生育委員会国際協力局の局長を務めていた。

この2人は当然、中国共産党員である。

コロナ対応で中国共産党政府に同調

WHOは、新型コロナウイルス(中共ウイルス)による流行が始まった頃、2019年12月31日時点でヒトからヒトへの感染が起きた可能性があるという報告を台湾から受けていた。にもかかわらず、2020年1月14日、WHOの公式サイトでは「ヒトからヒトへの感染の証拠は見つかっていない」「ヒトからヒトへの感染の可能性は否定できないが、ヒトからヒトへの感染が持続するリスクは比較的低い」という中国共産党の声明が繰り返されていた。

中共が武漢の閉鎖を急遽発表した後、1月28日、テドロス氏は習近平と会談し、中共の「透明性」を称賛した。同年1月30日に緊急事態を宣言したが、3月9日、WHOは渡航や貿易の制限は推奨していないと主張し続けた。WHOが「世界的大流行」と宣言せざるを得なくなった3月10日には、世界114か国で4000人以上が死亡し、10万人以上が感染している。

アメリカのトランプ前大統領がWHOの対応遅れを批判し、2020年3月に資金拠出を一時停止すると発表した後、同年4月23日、中共政府はWHOに3000万ドルの寄付を追加すると発表した。

安倍元首相は2020年4月17日の記者会見で、パンデミックについて、「同様の事態に備えるためにも、WHOの機能については十分な検証を行うべきだ」と述べた。

内部告発「中共がWHOに圧力」

CNN-News18とIndia Todayは4月17日の報道で、国連人権高等弁務官事務所の元スタッフでアイルランド人のエマ・ライリー氏が提供した新証拠を基に、国連人権高等弁務官事務所と中国共産党政府との間に問題のある関係が存在すること、また、WHOが中国共産党の影響下にあること、そして中国共産党が過去2期の国連総会議長に賄賂を贈っていたスキャンダルについて伝えている。

関連記事:WHOに中国共産党の賄賂と圧力 – 新証拠が明かす内部操作

ライリー氏は、中国共産党がWHOに圧力をかけて、新型コロナウイルス(武漢ウイルス、中共ウイルスとも呼ばれる)が実験室からの漏洩である可能性を示唆する記述を報告書から削除させたという証拠を提出した。

臓器狩りを無視

世界中の人々の健康促進に取り組むはずのWHOだが、中国国民にとっての「健康上のリスク」に十分に向き合っているとは言えない。中共政権は中国国内の「良心の囚人」、とりわけ精神修養法である「法輪功」の学習者に対して「強制臓器摘出(臓器狩り)」を行っている。

法輪功は、真・善・忍を原則とし、五つの気功のエクササイズを行う精神修養法だ。1999年、中国に法輪功学習者は約1億人いた。つまり、多くの人々が、法輪功を健康的かつ有益なものと捉えていたということだ。しかし、1999年7月、当時中国の指導者だった江沢民が一方的に法輪功を禁止し、残忍な迫害運動を開始した。収容所での強制労働や拷問などによって多くが命を落とし、法輪功学習者からの強制臓器摘出(臓器狩り)についても明るみに出た。

この臓器狩りが、WHOが謳う「ワンヘルス・アプローチ(ヒト、動物、環境の健康(健全性)に関する分野横断的な課題に対して、関係者が協力し、その解決に向けて取り組むこと)」に合致するだろうか。WHOの言い方に倣えば、強制的に臓器を摘出された人々が「死にかけている」ということであって、「健康上のリスク」と見なされるべきだ。

米連邦議会、欧州議会、イスラエル、カナダ、台湾などの国や組織は、臓器狩りに対応する法律を可決した。学者らも、ジェノサイド条約の基準に従って、この迫害が「冷たいジェノサイド」であることを認めた。

中立な立場にあるはずのWHOは、中国で臓器狩りの犠牲者が大勢出ていたにもかかわず、現地調査を組織しなかった。その代わり、法輪功学習者からの臓器狩りが拡大した時期に中国衛生部副部長だった黄傑夫を、WHOの「人間の臓器と組織の提供と移植に関するタスクフォース」のメンバーに招待した。

医療倫理擁護団体「強制臓器奪取に反対する医師の会(DAFOH)」の事務局長トルステン・トレイ氏はWHOに、「100万人以上の生存中の法輪功学習者に対する強制臓器摘出は、『健康上の大惨事』ではないだろうか」と問いかけた。

何が健康上の脅威に当たるのかをWHOが選択的に定義するのであれば、それはつまり、WHOは資金提供者の操り人形にすぎないということだ。

巨大な権限の一元化 まさに共産主義

世界保健機関(WHO)がパンデミック条約国際保健規則IHR)の改定を検討している。それによって、WHOがすべての加盟国に対して、予防接種、医療検査、DNA検査、健康診断を強制するようになる可能性がある。

WHOの事務局長が、国政選挙の直前に「健康上の緊急事態」を宣言すれば、大統領選挙に影響を与えることもできてしまう。監視と追跡を課すこともでき、データはWHOとその資金提供者の手に渡る。

2023年に、諮問委員会の過半数がサル痘に「世界的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言することに異を唱えたが、事務局長はそれを無効とした。言い換えれば、事務局長は、何を健康上のリスクとするかを決めるほぼ絶対的権限を世界規模で有している。

また、事務局長がそのような全体主義的な権限を備えている場合、次期局長選挙の投票に至るプロセスにおいて莫大な資金が注がれることで、汚職のリスクを生むことにならないだろうか。そうなればWHOはその中立的な使命を失い、党派性が表に出る危険がある。

新たな政策の採用は、冷戦中の軍拡競争さながらの「健康競争」に終わる可能性がある。人々の最大利益のための客観的な決定はできなくなるだろう。

国際保健規則( IHR)改正案の草案では、「人間の尊厳、人権および基本的な自由を完全に尊重しなければならない」という文言が削除された。この改正案が拘束力を持てば、「パンデミック時には、より大きな利益のために人権抑圧が正当化される」という前提の下、人権は根こそぎにされる。これは、憲法で定められた自由が、全体主義的な統制の犠牲となることに他ならない。

普遍的な人権を放棄しようとする者などいるだろうか。いるとすれば、それは権威主義政権くらいのものだろう。

政府は国民に対して権威主義的な措置を講じることができるが、個人には権利がない。これが中国共産党の指導者の見解であり、新たにWHOに導入される構造だ。言い換えれば、パンデミック条約と国際保健規則(IHR)改正案の成立は、億万長者や企業、敵国に私たちの主権を引き渡し、権限を付与するのと同じだ。国家は利益集団に屈服せざるを得ないことになるだろう。

 

清川茜
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