「あなたのために来た」女囚にマフラーを編み続ける79歳の女性

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米ペンシルベニア州に住む女性、ルセナ・ヘイヴリーさんは今年79歳。
彼女は、長年にわたる呼吸器の病気のため酸素吸入器に頼りながら、毎日神へ祈りを捧げ、ホームレスの女性や刑務所の女性服役囚に寄贈するマフラーを編んでいます。

(ルセナ・ヘイヴリーさんの写真は、こちらです)
 

ルセナさんの病気は慢性の閉塞性肺疾患です。「この病気はね。私が若い頃に、ずっとタバコを吸っていたからなの。だから身から出た錆なのよ」と本人が言います。

すっかり細くなった息づかいで、呼吸が苦しいことは明らかですが、ルセナさんの表情は明るく、その老いた笑いには、年齢を重ねただけの迫力があるようにも見えます。

彼女の足元のかごには、色とりどりの、太い毛糸であんだ手編みのマフラーが入っています。

東海岸の北に位置するペンシルベニア州の冬は厳しく、厳寒期は昼間でも氷点下にまで下がります。
ルセナさんは、そんな冬を暖かく過ごせるようにと、自ら編んだマフラーに「あなたが神のご加護を受けて、いつも希望がもてますように」というメッセージカードを添えて、ホームレスの女性や刑務所の女囚に寄贈しています。

ルセナさんはもともと社交的で、人と会うのが大好きでした。
まだ呼吸もさほど困難ではなく、自分の体がなんとか動かせた頃には、よく地元のスーパーマーケットへ行って、買い物をしたり、友人と会ったりしていました。

女性刑務所を訪問して、服役中の女囚と話をしたこともあります。ルセナさんは出会った女囚に向かって、必ず「あなたに会いにきたのよ。あなたは1人ではなく、神に愛されているわ」と伝えました。

しかし、今では肺の症状が重くなったことと、新型コロナウイルス(中共ウイルス)の市中感染が収まっていないこともあって、ずっと編み物をしながら自宅で過ごしています。

ルセナさんは、刑務所にいる彼女たちが、たとえ過去にどんな過ちを犯したとしても、神に忘れられていないことを伝え続けてきました。そして、神の許しと恵みが彼女たちに与えられることを、心から祈るのです。

ルセナさんにとって、これは「自身の使命」と言います。

子供のころ、心に傷を負ったことがトラウマとなった彼女は、成人後に、多くの「不健康な人間関係」のなかに陥ってしまいました。

それは全て、誰かに認めてもらいたい、誰かと親しくなりたいという彼女の心の渇望からくるものでした。彼女は傷心のあまり、16歳からお酒を飲み始めます。彼女の飲酒はまもなく常態化して、量も多くなり、アルコール依存症と言えるほどまで進んでしまいました。

30歳になる頃、過度の飲酒や喫煙ですっかり心身の健康を害した彼女は、自分でも何とかしたいと思い、28日間のリハビリコースに参加しました。

「断酒」が、このリハビリの最大目標でした。
ただ、実際のところ、リハビリセンターのスタッフの誰もが、「このコースを終えた人々のなかで、最初にグラスを手にする人(断酒の誓いを最初に破る人)は彼女になるだろう」と予測していました。

ルセナさん自身も、これが本当に大きな自分との闘いの過程であることを知っていました。「ここで、何としても我慢しなければ」。そう思って頑張ったのですが、残念ながら彼女は断酒の誓いを守ることはできませんでした。彼女は、再びお酒のグラスに手を伸ばしてしまったのです。

良薬は口に苦し、ということわざがあります。
その言葉と同じように、ある年配の支援者(それは彼女をリハビリコースに参加させた人です)が、自分の心の弱さのあまり、断酒の誓いを破ってしまった彼女を叱責しました。「自分の過ちは、自分で責任をとりなさい!」。

ルセナさんは、ここではっと気づきました。
この高齢の支援者の言うことは、たとえそれが厳しい叱責であっても、自分にとっては「良薬」である。そして、それ以上に、これほど自分に真摯に向き合ってくれる人がいることが分かり、それがどれほど喜ばしいことであるか。
ルセナさんの本当の「心のリハビリ」は、この時から始まったのでした。

この高齢の支援者は、その後のルセナさんの生活に大きな影響を与えました。
ルセナさんが「過ちの酒」を最後に飲んでしまったのは1978年でしたが、それ以来、彼女はずっと意識をはっきり保ち続け、お酒のグラスに手をのばすことは一度もありませんでした。

ただ、ルセナさんの「闇夜の道」はまだ続きます。
彼女はその頃から、自分と神との関係を意識し始めましたが、自分が過去に犯した数々の過ちは、永遠に神に許されないのではないかと心配していました。

そんな彼女は今、人生のどん底にいた当時の自身を振り返って、こう言います。
「あの頃は、自分が誰かから認められたいと思っていただけなの。だけど、本当にあの時は、自分は神に救われない人間だと感じていたわ」

ある時、ルセナさんは、自分を助けてくれる人を探していました。ところが、出会った教会関係の女性の口から出た一言は、「あなたは神に憎まれている人よ」。その言葉は、投げられたナイフのように、ルセナさんの胸に突き刺さりました。

ルセナさんは、もはや自分が「愛される価値がない人間だ」と感じていました。なにしろ教会までが、彼女を拒否したのですから。

彼女の抑うつ症状は急速に悪化し、ついに自殺の寸前まで進んでしまいました。自分でできる最後の努力として、彼女は1人のカウンセラーに会うことにしました。

教会の人でもあるその女性カウンセラーは、初めて会ったルセナさんに対し、全く意外な行動をとったのです。

はじめ椅子に座って対面していたカウンセラーは、ルセナさんを立たせると、その両肩に自分の手を置き、心からの誠意を込めてこう言ったのです。

「私はキリスト教会の関係者として、先日、教会の者があなたに言ったという侮辱的な言葉を、心から謝罪します。そしてあなたに、その過ちを許していただけるよう、お願いいたします」

その女性カウンセラーは続けて、「神の大きな愛から、誰も遠ざけることはできません」と言いました。両肩を抱かれてそれを聞いていたルセナさんの頬に、いつしか涙が流れていました。ルセナさんの心を閉ざしていた厚い氷が、その涙で解け始めた瞬間でした。

神の愛を信じることができるようになって、ルセナさんの心と体の健康状態も、次第に回復に向かうようになりました。

「私が子供の時、母は私に、私の人生はあまり良くないと言ったわ。でも今は、それが本当ではないことを知っています。神様は、私を救ってくれたのだから」と、ルセナさんは感慨深げに語ります。

彼女は今、酸素吸入器をつけた姿のまま(それは少し息苦しそうですが)柔和な笑顔で、こう語ります。

「私は毎朝、目が覚めると、神様おはようございますと挨拶します。そして私は、この酸素チューブもふくめて、全てを与えてくれた神に、心から感謝するのです」

そして彼女は(自身がかつてそうであったように)絶望のあまり自殺を考えたとしても、「自分には生きる理由がない」などと決して思わないでほしいと語ります。

神があなたを愛している限り、あなたには必ず希望がある。
その思いを込めて、ルセナ・ヘイヴリーさんは、今日も誰かのためにマフラーを編んでいることでしょう。

(翻訳編集・鳥飼聡)