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英雄叙事詩ーーホメロスの叙事詩 『イリアス』 『オデュッセイア』(四)

オデュッセイア

『オデュッセイア』は全編1万2000行あり、『イリアス』と同様24巻に分かれます。内容は『イリアス』の続編とも言え、ヘクトルの葬儀の後、トロイア戦争と何人かの重要人物たちの結末が書かれていますが、全体的に言えば、航海探検記が中心となっています。

 

デンマークの首都コペンハーゲンにある海神ポセイドンの彫刻(パブリックドメイン)

 

トロイの木馬戦略を立て、ギリシア側を勝たせたイタケーの王であるオデュッセウスは、戦争後、仲間を連れて帰国する途中、危険な目に遭い、海神ポセイドンの息子、単眼の巨人ポリュペーモスの目を突き刺して無事逃れましたが、このことをきっかけにポセイドンの怒りを買ってしまい、その後の旅で何度もポセイドンに邪魔され、非常に厳しい道のりとなりました。オデュッセウスは知恵を振り絞り、諦めない一心で、10年をかけてようやく国へ帰ることができましたが、王宮は悪辣な奴らに占領されてしまいました……

 

「odysseus in the cave of polyphemus」(1635年、ヤーコブ・ヨルダーンス作:パブリックドメイン)

 

この10年の間、オデュッセウスは、ポリュペーモスの洞窟から脱走し、魔女キルケーに打ち勝ち、そして、冥界へ行き、アガメムノンとアキレウスの亡霊に会いました。その後、海の妖怪セイレンの歌声の誘惑を破り、妖怪スキュラとカリュブディスの縄張りを通過し、海の女神カリュプソーによる7年間の軟禁から逃れることに成功しました……

一方、イタケーの国では、オデュッセウスがすでに戦死したという噂が流れ、地元の貴族たちはオデュッセウスの莫大な財産と妻ペーネロペーの美貌をのぞき見しました。イタケーの支配を企む陰険な貴族たちが王宮に住みつき、ペーネロペーに早急に結婚するよう強迫しました。ペーネロペーは何度も断り、オデュッセウスの帰還を待ち続けると主張しても、これらの人たちの付きまといから逃れることはできませんでした。

あらゆる困難と危険を乗り越えて、やっと国へ帰ってきたオデュッセウスは妻の窮地を見て、息子のテーレマコスとともに、自分の王宮に住みつきながら金銭を浪費している求婚者たちを討ち果たしました。

 

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どれほどの困難に遭っても、たとえユートピアのような生活でも、美しい女神の愛情でも、オデュッセウスの固い意志を揺るがすことはできず、彼は始終、初心を曲げずに、家に帰るという信念を貫きました。そして、オデュッセウスの妻も心を変えずに待ち続け、息子も勇気をもってアテーナーの導きに従って父親を捜す旅に出ました。3人の努力と神様の手助けの下、一家は再び集まり、円満なエンディングを迎えることができました。

オデュッセウスの探検記はドキドキハラハラして、思わず読むのに夢中になります。『イリアス』が広大な戦争叙事詩であるというならば、『オデュッセイア』は手に汗を握らせるような探検記というべきでしょう。

(完)

(翻訳編集・天野秀)

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