【芸術秘話】修道女プラウティッラ・ネッリの夢ーー困難を克服し、画家になる

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偉大な芸術家は言葉を通さなくとも、我々の心に語りかけることができます。戦慄する戦いの場面から喜びに満ちた聖典まで、芸術家たちは最も輝かしい場面と最も悲しい出来事に生命力を注ぎ込みました。

しかし、そんな芸術家たちの経歴に注目することはほとんどありません。彼らがいかにして困難を克服し、自分の価値観を貫き、周りの友人や知り合いと接してきたのか、ほとんどの人が知らないのです。実は、芸術家たちの物語は彼らの作品と同様、波乱万丈でドラマチックなのです。

フィレンツェの修道女プラウティッラ・ネッリ(1524-1588)は数々の困難を乗り越え、絶えず努力を重ねていき、ついにはフィレンツェ初の女流画家として成功を収めました。

修道女であるため、活動場所は修道院内に限られており、また、解剖学なども学ぶことができないため、男性の体の構造を知る術もなければ、自分の髪の毛以外、他の修道女や修道士の髪をじっくり観察することもできません。そもそも修道女でなくとも、当時、女性は男性のように絵画を学ぶことを許されていませんでした。しかし、ネッリはこれらの困難をすべて克服しました。

ネッリはアレッサンドロ・アローリとアーニョロ・ブロンズィーノが書いた、最初の絵画の原理についての本をもとに独学し、これまでの作品を模倣していくうちに絵画の技術を身に着けました。

 

キリストの哀悼」(Lamentation With Saints、プラウティッラ・ネッリ作)

 

実は、ネッリの生活環境の中には多くの宗教芸術作品が存在していました。修道院内のいくつもの偉大な作品の他にも、彼女自身、500件ほどのフラ・バルトロメオ(1472-1517)の絵画作品を継承しています。

フラ・バルトロメオは非常に著名な宗教画家であり、彼は同じく著名な画家フラ・アンジェリコ(1390/1395頃-1455)の画風を継承しました。
ジョルジョ・ヴァザーリ(1511-1574)の著述によると、ネッリは「コツコツと著名な画家たちの作品を模倣しながら手探りで絵画技術を身に着け、ついに、巨匠たちですら讃嘆するような作品を完成させた」といいます。

実は、ネッリの作品からは何か神秘的なものを感じると、貴族の間でも高く評価されていました。ヴァザーリによると、「彼女の作品はフィレンツェのほぼすべての紳士たちの家に飾られている」とのことです。

(翻訳編集・天野秀)