クワーテング英民間企業・エネルギー・産業戦略相、1月撮影(Photo by Leon Neal/Getty Images)

英国政府、中国による英国最大のマイクロチップ工場の買収を調査

中国国営テクノロジー企業による英国最大のマイクロチップ工場の買収について、国家安全保障に関する全面的な評価が行われることになった。

英国国内の政治的圧力やワシントン発の懸念もあって、クワーテング英民間企業・エネルギー・産業戦略相は「ネクスペリアによるニューポート・ウエハー・ファブの買収が国家安全保障に脅威を与えるのか」について調査することを了承した。ネクスペリアは、中国のスマートフォン・メーカーである聞泰科技(ウィングテック)の子会社である。

クワーテング氏は、「新しい国家安全保障投資法に基づく完全な評価を実施する」とし、「海外からの投資は国家安全保障を脅かすものであってはならない」とツイッターで発表した。

昨年、オランダに本社を置くネクスペリアは、ウェールズのシリコンウェハー・メーカー、ニューポート・ウエハー・ファブを6300万ポンド(約8000万ドル)で買収する契約に署名した。

英国国家安全保障顧問が実施した3月の調査の結果、英国政府は、同社の製造する技術は時代遅れであって、取引を阻止する十分な理由がないと結論づけていた。

しかし、英国政府との間には防衛関連プロジェクトを含む複数の契約があったため、今回の取引では 再調査が求められていた。

450人の従業員を抱える英国最大のマイクロチップ工場が中国に売却されたことは、内外で深い憤りと不信感を呼んだ。特に米国からは、下院外交委員会の共和党筆頭議員であるマイケル・マコー議員を含む9人の議会議員が、先月買収を覆すために、英国政府による「緊急行動」を要求する書簡に署名した。

世界的なチップ不足

中国の投資や買収の調査を行う投資審査専門企業「ダテナ」は、ウィングテック社の株主を分析した結果、同社が、中国共産党の支援を強く受けていることを突き止めた。報告書には、国務院国有資産監督管理委員会や中国政権が運営する特定の半導体投資ファンドの存在が指摘されている。

内外の懸念に加えて、パンデミックによる工場閉鎖によって、世界的なコンピューター・チップ不足が深刻化している。

半導体は、製造業にとって非常に重要であり重要な戦略的資産と見なされている。

今回の調査は「国家安全保障投資法」の施行後初めて実施されるものである。政府は、国家安全保障を理由に、遡及も含めて買収に介入する権限を持ち、評価は30営業日までに実施される。

評価の結果によっては、同社が本来所有していた14%にまで、持ち株比率を下げざるを得なくなる可能性もある。

昨年、ジョンソン首相は「反中感情が理由で中国からの投資を追い出したくはない」と述べた。しかし、中国国営企業が自国インフラや国家資産の重要な一部を買収しているという恐れが高まり、人権問題や攻撃的な経済拡張主義に対する政治や国民の反発の中で、大規模な英中関係の見直しが迫られている。

(翻訳・大室誠)

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