岸田文雄首相 (Photo by STR/JIJI PRESS/AFP via Getty Images)

自民党外交部会、人権外交提言案を岸田首相に手交

岸田文雄首相は8日、自民党外交部会から人権外交に関する第三次提言案の手交を受けた。人権侵害を理由とした輸出管理、国民の人権概念の理解促進、ウクライナを例にした避難民庇護といった各対策の強化を掲げる。佐藤正久部長によれば、避難民対策強化は台湾有事も見越した必要な措置としている。

佐藤氏は、人権ビジネスにかかる人権デュー・ディリジェンスの政府ガイドライン策定は企業側からの要望は多いと公式ブログに綴る。「日本の機微な技術等が外国における重大な人権侵害に用いられることのないようにする仕組み」づくりが提言案には盛り込まれており、省庁間で一体となり議論を推し進める必要があると訴えた。

提言案は国民の人権概念の理解促進についても提起している。人権保障は具体的に法制度が求められるのが国際規範とし、「『人権』という概念が、日本人が本来的に重視してきた『他者の尊重』や『思いやり』といった内心の感覚と親和性がありつつも、実は次元が異なる価値観であり、その制度的保障が重要であることを国民に広く認識してもらう広報を行うべきである」とした。

佐藤氏は、人権侵害に関する国際的批判に対して中国共産党が内政干渉だと反論している例を挙げ、「人権は『普遍的な価値』であり、精神的自由や政治的自由、経済的自由をその国の政権の都合で侵害してはいけない」と論じている。

提言案ではこのほか、在外公館に各国の人権情報を収集する「人権担当官」を設置する必要性を記した。

中国における人権侵害問題について、欧米諸国は対処を強化している。米国では6月21日から「ウイグル強制労働防止法」が施行される。輸入業者が「明確で説得力のある証拠」を示さない限り、新疆ウイグル自治区で製造された物品は強制労働に関連があるとみなされ、税関国境警備局の法執行対象として押収される。

欧州委員会は2月、企業活動における人権や環境への悪影響を予防・是正する義務を課す「企業持続可能性デューディリジェンス指令案」を発表した。一定規模以上の企業を対象に、子会社や取引先などにおける人権環境の監督を要求する。対象企業に違反行為があれば売上高に応じた罰金を科される。

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