2019年7月2日、ロンドンのウィンブルドンにあるHSBCのコートで行われたウィンブルドン記者会見に参加したティム・ヘンマン選手 (Nicky J Sims/Getty Images for HSBC)

英議員連盟、ウィンブルドンにHSBCとのスポンサー契約解除求める 「香港人への人権侵害を支持」

英国の香港に関する国会議員連盟(APPG)の議員らは、香港国家安全維持法(国安法)を支持する英金融大手・香港上海銀行(HSBC)とのスポンサー契約を解除するよう、ウィンブルドンを主催するオールイングランド・クラブに求めた。HSBCは「香港人に対し残忍な人権侵害を行うことを支持してきた」と警告した。

APPGはオールイングランド・クラブのサリー・ボルトン最高責任者宛の書簡で「新たな逮捕、脅迫、監禁が連日報道され、(国安法による)民主主義への組織的な攻撃が行われている」と香港の現状を説明した。その上で国安法を支持するHSBCは「重大な人権侵害に加担している」と強調し、同社とのスポンサー契約を見直すよう促した。

また、2019年の逃亡犯条例改正案の撤回などを求める香港民主化デモの際もHSBCは「人権や自由、民主主義の原則を守るために立ち上がったことはない」と指摘。同社との関係維持は「オールイングランド・クラブの評判に泥を塗ることになる」と述べた。

2020年6月、中国共産党は香港での離反行為、破壊行為、外国勢力との結託などを禁止する国安法を成立、施行した。違反者には最高で無期懲役が科される。英国政府が2021年に発表した報告書は、同法律が旧英国植民地における表現の自由を「大幅に制限する」ために利用されたと指摘している。

1865年に香港で創業し、後に英国に本拠地を移したHSBCは、伝統的に政治的中立性を維持しようとしてきた。しかし、2020年5月末に中国全国人民代表大会(全人代)が国安法の制定方針を採択した数日後、中国人民政治協商会議のメンバーでもあるHSBCアジア地域最高幹部のピーター・ウォン(王冬勝)氏は、同法を支持する文書に署名。HSBCグループのノエル・クイン最高経営責任者も「香港から手を引く気はない」と発言した。

HSBCは後に立法会(議会)前議員で民主活動家の許智峯氏や、廃刊に追い込まれた香港紙・蘋果日報の創業者、黎智英氏の口座を凍結している。

今年1月には、HSBCが匿名の顧客のために、ウイグル人への残虐行為で制裁対象となっている中国の準軍事組織の子会社の株式を保有しているとロンドン・タイムズ紙が報じた。

オールイングランド・クラブの広報担当者はAPPGからの書簡に対して「懸念を表明したことに感謝する。私たちは順次、回答する予定だ」と大紀元へ声明を寄せた。

(山中蓮夏)

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