大英帝国南極横断探検中(1914-1917)に撮影された南極大陸でのエンデュランス号の写真。(パブリックドメイン)

南極の難破船「エンデュランス号」 100年の時を経てついに発見される

史上最も有名な難破船の一つであるアーネスト・シャクルトン卿のエンデュランス号が、沈没から100年以上経った今、ついに南極の氷の中、水深3000メートルで発見されたと、沈没船を捜索していた探検家が発表しました。

(水深3000メートルのエンデュランス号の写真はこちらから)

メディア各社の報道によると、エンデュランス号はウェッデル海の海面下3008メートルに位置し、1915年に流氷にゆっくりと押し潰された場所から約6キロメートルの地点にあると言います。

この捜索はフォークランド海洋遺産財団によって企画されました。南半球の夏が終わる前にエンデュランス号を発見するため、南アフリカの砕氷船アガルハスII号で2月5日にケープタウンを科学者チームは出発しました。

科学者チームは砕氷船と遠隔操作できる水中ドローンを使用して捜索に協力しました。2週間以上にわたる調査の結果、水中ドローンは捜索範囲の測量に成功し、3月6日に深海で同船舶を発見しました。

「この船は、私がこれまで見た中で最も保存状態のよい木造の沈没船で、船体はほぼ無傷のまま海底に直立しています。船尾に『エンデュランス』とアーチ状に書かれているのも見えます」「シャクルトンのシーマンシップ(航海術)は探検隊がこの難破船を発見するのに役立ち、彼の歴史的記録は非常に貴重です」と、探検隊の調査責任者である海洋考古学者のメンサン・バウンド氏は言います。

バウンド氏はまた、変化する海、嵐、低温と絶えず戦いながら、世界で最も困難な沈没船の捜索を完了したことで、極地の歴史において金字塔を打ち立てることが出来たと述べています。

沈没船の画像を見ると、様々な海洋生物に占拠されているものの、深刻な腐敗状態には至っておらず、良好な状態であることが確認できます。ウェッデル海は氷に覆われているため、木材を傷めるような生物がほとんど生息していないためとみられています。

発見までに時間がかかった理由のひとつは、ウェッデル海がほぼ永久に厚い氷に覆われていることです。この海氷がエンデュランス号の船体を砕いたのだといいます。現代の極地用砕氷船をもってしても、沈没地点へのアクセスは困難だったことでしょう。幸いなことに、今年は南極の海氷面積が過去最低となっています。

この船の沈没は、人類史上最も偉大なサバイバル・ストーリーの一つです。エンデュランス号は、1914年から1917年までのシャクルトン卿による南極大陸横断遠征に参加した船で、乗組員は世界で初めて南極大陸横断を成功させるつもりでしたが、3本マストの帆船は激しいウェッデル海には敵いませんでした。

1915年1月、この木造船は南極半島のラーセン棚氷の東方で層氷(そうひょう)に閉じこめられ、冬の間そこで過ごし、10ヵ月後、次第に氷に圧迫されて沈没しました。しかし、シャクルトン卿と27人の仲間は、極寒の地で1年半も格闘し、徒歩とボートで奇跡的に生還したのです。

シャクルトン卿と彼の探検隊の探検は失敗に終わりましたが、極地探検の歴史に伝説を残しました。

南極条約により、エンデュランス号の残骸は史跡・記念碑として保護され、調査・撮影は許可されていますが、水中ドローンは残骸に触れることができず、そのままの状態で残骸が残されています。

(翻訳・井田千景)

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