婚姻における三つの重要な関係ーー『女誡』女性のための知恵袋【雅(みやび)を語る】

多くの女性にとって、恋愛時代と結婚後の生活や人との付き合いは、全く異なるものです。中でも人間関係における対処方法が最も重要となってくると言っても過言ではないでしょう。

結婚は、愛する相手と家庭を築くことだけではなく、いかに良い人間関係を築いていくかも問われます。例えば、夫、その両親や兄弟姉妹との関係などにおいては、女性の知恵が試されます。

それをうまく対処することができれば、親族たちとも和やかに団らんすることができます。しかし、うまくできない場合は、心身ともに疲労を感じ、心が傷だらけになることも少なくはありません。

それでは、中国初の女性歴史家であり、後宮后妃の師範でもあった班昭(はんしょう)が著作し、当時、多くの女性の必修教訓書であった『女誡』を参考にして見てみましょう。

まずは夫との関係です。中国文化では、「」という言葉が非常に重視されています。これは、私たちは生まれた瞬間から全て定められているという意味を持つ言葉です。誰が親で誰が兄弟なのか、友人やクラスメイト、仕事仲間などとの走馬灯のように流れる出会いや別れ、どれも自分で決めることはできません。言い換えれば、縁から逃れることはできないし、人為的に縁をつかむこともできないということです。人間は「縁」で繋がっているのです。

中国では、「前世500回の縁(えにし)が、今生1回の出会いに換える」という言葉があります。これはあくまでも一般的な縁です。

「百年修得同船渡,千年修得共枕眠」ということわざがあります。「百年修行してようやく同じ船に乗ることができ、千年修行してようやく枕を共にして眠ることができる」という意味です。それほど人と人との出会い、特に夫婦になれることが素晴らしく、前世の努力、ひいては犠牲がなければ、今生で会えるかどうかも分らないものなのです。

皆さんは「一期一会」をよくご存じだと思います。一度限りの縁なので、たとえ嫌いな人でも、その人と知り合いになった背後には、前世の自分の努力や犠牲があると思うと、気持ちが静まるのではないでしょうか。

運命から逃れられないのなら、素直に受け入れ、どのようにお互いの問題を解決できるかを考え、縁を大切にしましょう。親しい関係も修行の一種だという人もいます。

他人やあまり顔を合わせない人の前では、親切にかつ丁寧に振舞えますが、毎日一緒に暮らしている人の前では、多くの欠点が暴き出されるからです。その上、親しければ親しいほど矛盾やトラブルが生じやすいものです。

夫婦間で互いに思いやり、尊重し合うようになるには、時間をかけて、様々な工夫をして育まなければなりません。

『女誡』の中には、「夫不賢,則无以御婦,婦不賢,則無以事夫」という一文があります。夫に徳行(徳の高い行い)が備わっていなければ、(メンタル面では)妻を導くことができず、これにより尊重されることもないので、終いには、家庭の中で大黒柱としての威厳を失うことになります。

一方、妻が気立てや善良さを失う、例えば、現代社会で言うなら、妻が毎日美容や買い物ばかりして、料理もしなければ、家事もやらず、夫が落ち込んでいる時に慰めたり、支えてあげたりすることもしない状態では、妻としての道義(ふみ行うべき道徳上の筋道)を失っているのです。

次に、多くの既婚女性が対処しなければならないのは、夫の両親ー舅、姑との関係です。夫婦間はうまくいっても、舅、姑に反対されたり、良く思われなかったりする場合、本当の家族団らんとは言えないでしょう。

では、どのようにして義父母のご機嫌を取るのでしょうか?

まずは、義父母と物事の良し悪しを争わないことです。率直に言えば、たとえ心の中では不満があっても、決して口や顔に出さないようにしましょう。年寄りの方は長年形成された観念を中々取り除くことができないので、彼らを変えようとは思わずに、できる限り寛大な心で受け入れましょう。

義父母の次は夫の兄弟姉妹と良い関係を保つことも大切です。『女誡』の中には、「夫嫂妹者,体敵而尊、恩疏而義親。若淑媛謙順之人,則能依義以篤好、崇恩以結援」と書かれています。

つまり、夫の兄弟姉妹は、自分とは血は繋がっていないが、家族になったからには深い縁があるわけなので、夫の家族と仲良く接し、謙虚で柔順な女性になりましょう。

上記のことから、自らの才学を書物にまとめて後世に残す班昭の心配りがよくわかります。女性がいかにして婚姻の中で、安心かつ心地よく暮らしていけるかを、班昭は一人の女性として、多くの知恵を残してくれました。

現在と昔では、生活が大きく異なりますが、人間付き合いに関してはそれほど違いはありません。もし、あなたが夫や義父母、あるいは夫側の兄弟姉妹との付き合いに悩まされているのでしたら、試しに上記の方法を実践してみてはいかがでしょうか?

(翻訳編集・天野秀)
 

 

雅蘭