ローザンヌ大学の心理学者ジョン・アントナキス氏によると、IQは職場で成功するかどうかを判断する最も重要な予測因子の1つだといいます。(Shutterstock)

専門家に聞いてみた IQが高くなければ社会で成功できないのか?

親なら誰でも、自分の子どもには高い知能指数IQ)を持っていてほしいと願うものです。そうすれば、子どもの人生にプラスになるだけでなく、親の心配も少なくなります。しかし、IQの特に高い人が将来、より成功したキャリアを歩むというのは本当なのでしょうか?スイスの心理学者は、このことについて肯定的です。

スイスのローザンヌ大学で組織行動を研究する心理学者ジョン・アントナキス教授は、CNBCの取材に対し、「IQは職場で成功するかどうかを判断する最も重要な予測因子の1つだ」と語っています。

2012年、ヴァンダービルト大学の研究者たちは、IQの高い人は低い人に比べて、平均して収入が高い傾向にあることを発見しました。また、高いIQが学業成績、職務遂行能力、キャリアポテンシャル、創造性などのより信頼できる予測因子であることも明らかにされました。

アントナキス氏によると、物理学者、エンジニア、神経外科医など、非常に複雑でスキルを必要とする職業では、IQの高さが特に成功の要因になるといいます。しかし、心配しないでください。あなたがメンサ(世界最大の高IQクラブ)の会員でなくても、5つの特性を持つことが、職場で成功するために役立つのです。

– 社交的で親しみやすい人柄であること

– 自信

– 新しい経験を受け入れる

– 組織力

– 高いコミュニケーション能力

アントナキス氏は、IQと出世や学業成績の関係は「自明の理」であると説明します。IQは、推論し、情報を処理し、その情報を使って問題を解決する能力を直接的に表すからです。

「そして、常に自分を磨き、新しいスキルを身につけ、十分な情報に基づいた決断を下すなど、学習能力が高ければ高いほど、仕事で優れた成果を上げ、前向きにキャリアアップできる可能性が高くなるのです」

しかし、多くの研究により、成功するためにはIQだけでは不十分であることも分かっています。多くの心理学的研究によると、先に述べた5つの重要な性格特性は、あなたの人生を一歩前進させるのに役立つと言われています。

IQが高いことは、成功の確実な予測因子かもしれませんが、絶対的なものではありません。例えば、アントナキス氏によれば、IQの高い人が比較的複雑でないポジションに置かれた場合、仕事が退屈でやりがいがないため何もしないことがあります。また、他のメンバーに比べてIQが高すぎるリーダーはトラブルを起こすことがあるし、上司と比べて頭が良すぎる社員も同じようにトラブルを起こすことがあるといいます。

アントナキス氏自身の研究によると、IQの高いリーダーは、IQの低いリーダーよりも高いパフォーマンスを発揮する傾向があります。しかし、頭が良すぎても同僚に認めてもらえず、上から目線だとか、傲慢だと受け取られる可能性があり、リーダーと部下とのIQ差が開きすぎると指導が難しくなることも指摘しています。

そこで、特に重要になるのがコミュニケーション能力です。イギリスの元首相マーガレット・サッチャーやウィンストン・チャーチルなど、高い知性を持ったリーダーは、コミュニケーション能力とカリスマ性を駆使して、複雑な戦略をわかりやすく提示し、多くの支持を得たとアントナキス氏は言います。

学者たちはこの能力をEQ(Emotional Intelligence)と呼んでいます。アントナキス氏は、EQは実はIQに含まれると考えています。頭が良ければ、自分の考えを最も説得力のある形で伝える方法を知っているものです。

結局のところ、職場で最もIQの高い人が最も成功するとは限りませんが、優位に立てることは確かです。

(翻訳・里見雨禾)

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