職場で不当な扱いにあったとき、一歩踏み出してハードルを越えることがとても大切です。 (Shutterstock)

職場で「不当な扱い」を受けた 素直に受ける賢者の思考法

職場で「不当な扱い」を受けることは、よくあるものです。そんなとき、どう対処したらいいのでしょうか。 

私は若い頃から、文章を書くのが好きでした。そのころよく、私が勤める研究所の財務管理の上司からテーマを与えられ、それに対する答えを考えるよう課題を出されたことを思い出します。

自分なりの答えを見つけた後、私はレポートにまとめました。上司はそれを高く評価し、私に出版部門への投稿を勧めました。この文章は意外に早く出版されただけでなく、そのことで私は、職場でちょっと有名にもなりました。

当時、勤務先で、全国規模の大きな問題が起こりました。私は、それを解決するための戦略を練り、具体的な方法を考えて季刊に投稿したのです。 その後で、勤務先の部署名が分かるように文章を書き直し、部門管理者の承認を得た上で、解決策を実行に移し始めたのです。

その作業に2〜3カ月かかったでしょうか。ところがある日、仲の良い同僚から突然、こんなことを、こっそり告げられたのです。

「君が機密情報を漏らしたとして、所属長から監視部門に徹底的に調査するように言われたらしい」

私はとてもおかしいと思ったので、掲載された報告を持って自分で監視部門に行き、「これは個人情報に関わる記事ではないので、漏洩の問題はないはずです」と説明しました。 しかし、残念ながらその時は、監視部門の責任者は不在で、私にこっそり告げてくれた同僚だけが対応してくれました。

彼は、「こことは別の事業部が、私の文章を読んで、ある怪しい業者を事前に調査していなかったことに気づき、後の工程に大きな迷惑をかけてしまったからだよ」と、私に言いました。

彼から事情を聞いて私は嬉しくなり、同僚に「これは誤解だ。情報漏洩ではないよ」と伝え、まず彼に安心してもらうようにしました。

しかし私は、翌日また監視部門の責任者に呼ばれました。そこで私は、「君は余計なことを書いて、他の会社に業績をゆずってしまった」と怒鳴られたのです。 

「君は身の回りの整理をしておきなさい。降格はしないが、この職場から異動することになるだろう」

こうして私は、一夜にして「機密漏洩」と「各部門の責任者から下の部門への異動」という懲罰を受けることになったのです。

それから10年以上経ったある日、ふと今の上司から「機密漏洩」と「転勤」のときはどうだった、と聞かれました。

もう時間が経っているので、影響はないだろうと思い、本当のことを話しました。すると上司は、「君が当時受けたのは不当な扱いだったようだね。それを君はどうやって乗り越えたのかね」と聞きました。

私は上司に『荘子・秋水篇』の逸話を伝えました。荘子には、梁の惠王の宰相であった惠施(けいし)という旧友がいました。 荘子が惠施を訪ねようとしたとき、ある人が惠施にこんなことを告げました。

「荘子があなたの代わりに梁の国に赴き、宰相になりたいと言っている」

それを聞いた惠施は慌てて、荘子を捕えるために、荘子がいる魏の国へ行き、三日三晩探しましたが見つかりませんでした。意外なことに、荘子は自らやって来て、微笑んで惠施にこう言いました。

「南方に鳳凰という鳥がいるのを知っていますか。ある日、たまたま上空を飛んできた鳳凰を見て、フクロウは自分が食べようとしていた腐ったネズミを奪うのだと思って、鳳凰を見上げ怒りをあらわにして追い払いました。しかし鳳凰はあの腐ったネズミなど何とも思ってなかったのです」

つまり当時の私にとって、もとの職場から転勤させられても、まったく気にすることはなかったのです。 私が気にするのは、自分の提案が採用されるかどうかではなく、会社全体にとって有益かということです。さらに、それが皆にとって有益であれば、十分だと思っています。 

このようなことは、どの職場でもあり、どの会社にいても経験するはずです。

職場で「不当な扱い」を受けたら、自分が『荘子』の「鳳凰」になって高い空を飛んでいるイメージをもつのです。 藪の中のフクロウが、鳳凰がネズミをひったくるのではないかと恐れて、下からいくら威嚇しても気にならないはずです。

自分の小さな執着を捨てることで、職場の環境が良くなるならば、それは職場にも社会にも、きっと良い結果をもたらすはずです。

(翻訳編集:里見雨禾)

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