2018年9月21日、ジュネーブの本部にある世界貿易機関(WTO)事務所(Fabrice Coffrini/AFP via Getty Images)

G7貿易相は対中強硬で合意=独経済相

主要7カ国(G7)貿易相会合は15日、2024年までに世界貿易機関(WTO)の全加盟国が利用可能な紛争処理システムを完全に機能させることを目指すと共同声明で発表した。ドイツのハベック経済相は「中国に対してより強硬な立場をとることで合意した」と会合後の会見で語った。

ベルリンで開かれた2日間のG7貿易相会合のなかで、ハベック氏は「高い国際貿易基準を確保することで、中国が経済力を背景に他国を圧迫することを防ぐ」と記者団に述べた。

G7貿易相の共同声明には「WTOは開放性、透明性、公正な競争、法の支配といった共有する価値観を反映する必要がある」とし、WTO改革に建設的に取り組むと確約した。

また「あらゆる形態の強制的な技術移転、知的財産権の盗用、競争優位性を得るために労働基準と環境基準を引き下げる不公正な行為、国有企業による市場歪曲的な行為、過剰生産能力をもたらすものを含む有害な産業補助金」に懸念を表明した。声明は中国を名指ししていない。

「中国に対して、もうウブではない」

「中国に対して、もうウブではない」と、ハベック氏は対中態度を硬化させる考えを示した。社会問題や人道上の懸念を無視して「何が何でも貿易をしようという姿勢は、これ以上容認すべきではない」と語った。

ドイツの統計データによれば、中国は2021年末まで6年連続でドイツの世界最大の貿易パートナーとなっている。2021年のドイツの対中国貿易額は2454億ユーロで、前年比15.1%増となった。

ハベック氏は、今後ドイツは対中貿易に強硬路線をとると同時に、欧州連合(EU)も「中国により強力な貿易政策を策定し、自国の経済を守るために対処するよう働きかける」と述べた。また、日米英独仏伊加のG7加盟国も「行動を調整することで合意した」と付け加えた。

中国のWTO加盟から20年にあたる昨年10月、WTOでは対中審査会が開かれた。米国をはじめ日本やオーストラリアは、中国共産党の公約不履行や国有企業への補助金問題、他国への報復的経済圧力などを非難した。米通商代表部(USTR)は今年2月、中国によるWTOルール順守状況を評価する年次報告書のなかで、外国企業の排除など国家主導の不公正な政策が続いていると指摘した。

中国政府による人権侵害の報告が相次ぐなか、米欧は強制労働製品の排除をはじめ対中貿易では硬派に姿勢を傾けている。今回のG7貿易相会合が行われた同日、欧州委員会は、強制労働により生産された製品のEU域内での流通を禁止する規則案を発表した。強制労働が関わった製品をEU市場に流通させたり、EU域外に輸出したりすることを禁止する。

米国では、「ウイグル強制労働防止法」が6月施行された。同法は新疆ウイグル自治区からの輸入品が強制労働で生産されたものではないと企業が明白に証拠を示すことができない限り、輸入を原則禁止する。

同地域の強制労働廃絶のために活動する「ウイグル強制労働停止」によると、世界のアパレル産業の綿製品の5分の1は新疆の強制労働に関わると推定されている。

また、世界的に需給の高まる太陽光パネルの材料となる多結晶シリコンを製造する世界大手5社のうち4社が新疆にあり、人件費を考慮しないウイグル人収容施設での製造が行われていると、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が昨年指摘している。

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