現代中国キーワード(大紀元エポックタイムズ・ジャパン)

「鬼城」は怨念がつまった幽霊の街【現代中国キーワード】

鬼城

城は、日本であれば江戸城や大阪城になるが、中国語の「城」は都市を指す。

そのため「鬼城」は、よく「ゴーストタウン」と説明される。間違ってはいないが、十分な説明になっているようにも見えない。

ゴーストタウンという言葉は、中国以外の国では昔から用例があった。例えば、アメリカ映画の西部劇では、かつて金鉱で賑わったが、今は金が出なくなってすっかり寂れてしまった街として出てくる。もっとも、全く無人では映画が始まらないので、誰かは必ずいるのだが。

中国語の「鬼」は、豆まきのオニではなく、まさに人が死後に一度はなる幽霊のことを指す。ただ、おかれている状態が悲惨すぎるのだ。成仏できず、墓にも入れず、供養する家族もいない「幽鬼」たちは、すさまじい飢えに苦しみ、うめきながら現世を徘徊するのである。

そこで中国人の葬儀では、死者のために大量の紙銭を焼き、山のように供物をそなえて「幽鬼」にならないようにと、まさにリアリズムの感覚で祈る。「鬼」は忌み言葉の最たるものであるため、その文字がついた「鬼城」は、ただの「人がいない街」ではない。

90年代から2000年代にかけて、投資を目的とする中国の不動産バブルは狂気的なほど過熱した。それが今は氷のように冷め、完全に崩壊している。

残された物件は、ただの空き家ではない。マンションも戸建ても、莫大な負債による怨念を満載し、巨大な亡霊となって、無残な姿を象徴的にさらしているのだ。

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